トッテナムはポゼッションを捨てていない

久しぶりにコラムっぽい記事です。お付き合いください。

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あえてだと信じてみる

 ジョゼ・モウリーニョが就任して以降、基本的にスパーズはポゼッションにはこだわらない方針でやってきている。まずは相手の攻撃を受け止めて一撃のカウンターを突き刺す。特に相手のレベルが上がるほどのその姿勢は顕著になり、精度も上がっていく。

 この恩恵を最も受けているのがソン・フンミンで最近は毎節のように解説に言われているが、「シュート数あたりの得点数、いわゆる決定率はメッシ、ロナウド、レヴァンドフスキよりも上」だそうだ。ケイン、ソンという決定力おばけがいるおかげで成り立っているが、どんなチームにもまずは受けに回る姿勢には結果が出なくなるほどにモヤモヤしてきている。

 ではボールを握るスタイルに転換した方がいいのだろうか。ポゼッションが正義でカウンターは悪なのだろうか。サッカー界では定期的に登場するこの議題だが、個人的にはどっちでもいいと思っている。サッカーの目的は相手より多く得点を奪うことであって、ポゼッションもカウンターもその手段でしかないのだから。

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 ちょっと話が逸れてきたので戻します。戦術に優劣はないと思うがポゼッションにこだわらないこととポゼッションができないことは違う。何がしかのタイトルを目指そうとするのなら、複数の戦術を使いこなせるに越したことはない。

 事実、シーズン前半に強烈なカウンタースタイルでセインツやユナイテッドを粉砕し、一時は首位になるまで上り詰めるもここのところ対策されている。スパーズと対戦するときは自分たちがボールを握る展開になる。ここで上手く攻められなくても焦る必要はない。後ろのスペースのケアが出来ていればスパーズの攻撃力は半減するぞ、と。

 そうなってきた時のために、というかもうなっているのだけど、別の戦い方もできるに越したことはない。そんなことを考えながらシェフィールド戦を見ていた。ここに通用しなければ他のチームには通用しない。それほどに今のシェフィールドは調子がよくない。

 案の定、序盤からスパーズがボールを握る時間は長かった。少なくともこれまでの試合よりは。そしてこれまでの試合と同じように、ボールを前になかなか運べずにいた。最終ラインがボールを回すばかりで前に進まない。苦しくなったら前に蹴ってしまう。

 ポゼッションをして攻めるというと、ポチェッティーノ時代にあったようにDFも全員が相手陣内に入り、押し込んでいくイメージが強くある。だからこそ、今シーズンずっとビルドアップが課題だと思ってきた。でもシェフィールド戦で気がついた。たぶん僕は勘違いをしていて、固定概念に縛られていたんじゃないだろうか。

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 今、スパーズの攻撃の最大の武器はなんだろうか。言わずもがな、ソンとケインの決定力だ。チャンスの数は少なくてもシュートさえ打てれば決めてくれる。持っている武器をもっと活かせる戦略を立てるのが監督としては当然の成り行きだ。それは間違っていない。

 だからこそ、ボールを持っている時も、その武器をどう使うかを考えて攻撃を設計しているのではないだろうか。ケインはともかくソンはスペースがある方が輝く。逆サイドに入るベルフワイン、モウラ、ベイルもみんなそういうタイプだ。

 押し込んで自らのそのスペースを埋めてしまうのではなく、一見低すぎるとも思える位置でボールを回して相手が出てくるのを待っているのだ。両ウイングは高い位置に張り付いて相手DFを牽制し、あわよくば裏を取ろうと狙い続ける。しかし相手FWはこちらにプレスをかけてくる。一発で裏を取れればよし、そうでなければ間延びさせた中盤でエンドンベレや降りてくるケインに一度預ける。おそらく、これを狙っている。

 やや内側にいるウイングに集中させて、両サイドバックをフリーにする狙いもある。フルハム戦でホイビュアのロングパスでレギロンが抜けてケインにクロスを送った場面がそれだ。あれは一つの理想形で、なかなかあそこまで綺麗に決まることはないけれど。

 こう考えていくと、モウリーニョも決してポゼッションを捨てているわけではないことがわかる。戦術にはポゼッションとカウンターしかないのではなく、ポゼッションの中にもいろんな種類があって、一般に認知されているのがポチェッティーノやグアルディオラがやっている押し込み型であるというだけだ。

 モウリーニョに答え合わせする術はないから、本当のところはわからないけれど、筋は通っているんじゃないでしょうか。どうですか。

 まあ考え方は分かったとはいえ別に上手くいっているとは思っていない。シェフィールド戦も得点はセットプレーとショートカウンターだったし。むしろ最終ラインメインで組み立ててていると、変な奪われ方をされて逆にカウンターを受ける場面も出てくる。縦パスを前線が収めきれずに相手ボールになるシーンが少なくなかった。そりゃウイングが相手を背負った状態でボールを受ける前提で攻撃が設計されていないのだから、ああなるのは当然のことだ。ここは見直さないといけない部分だった。

 うちはカウンターしかできないわけではない。カウンターと同じ武器でポゼッションを目指しているだけだ。理にかなっていると思う。真価が問われる時がくるのは、ソンとケインのどちらかが離脱した時だ。考えたくはないが必ずその時はくる。飛車角落ちのハンデを背負った時にどう攻めるのか。そのプランBを持っていることを切に願おう。

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