はじめてのトッテナム・ホットスパー

 高井獲得の報を受け、これを機にトッテナムに興味を持ってくれる人が増えるんじゃないだろうかという下心満載で筆を取っております。海外サッカーを日頃見ていない人からすると、そこまで馴染みのないクラブかもしれません。そこでまずはこれを読んでおけばいいよと勧められるような記事を目指して情報をまとめてみたいと思います。

 観戦がもっと楽しくなるように!というのが目標なので内容には過不足あると思います。既にサポーターしているみなさんはこんな情報もあるといいよっていうのがあれば教えてくださると幸いです。

基本情報

クラブ名

 Tottenham Hotspurというのが英語での正式名称です。日本のメディアでは「トトナム」「トットナム」「トッテンハム」なんていう表記もされたりしますが、個人的には「トッテナム」が好きなのでここではそう表記します。ちゃんと統計を取ってはいませんが、たぶんトッテナム表記がメディアでも一番多いです。

 イングランド・プレミアリーグのクラブには愛称のついているクラブが多くあります。トッテナム・ホットスパーの愛称は「スパーズ」です。これはかなり認知度が高くて、試合中継を見ていると、日本の実況や解説の人も当たり前のように「スパーズ」という呼称で試合の話をしています。このサイトの名前にも使っていますね。クラブもこれを推していきたいらしく、昨シーズンは公式の声明で「スパーズ」と呼んでほしいという旨を発表していました。なので試合の中継では〇〇vs△△と画面に出る時にSpursだったりスパーズだったりと表記されていることが多くなってきました。でもそんなに厳密な話じゃないので、いきなり愛称で呼ぶのに抵抗あれば、トッテナム呼びで全然大丈夫です。そのうち発音しにくくてスパーズと呼びたくなると思いますので自分のタイミングでどうぞ。

 ちなみにトッテナムは本拠地のある地域の名前で、ホットスパーはクラブの関係のあった昔の騎士の相性だそうです。意味は「向こう見ずな人」だったとか。

ホームスタジアム

 イングランド(イギリス)の首都、ロンドンにあるクラブです。スタジアムはそのまんまの名前ですが、「トッテナム・ホットスパー・スタジアム」と言います。サッカークラブは企業にスタジアムの命名権を売るビジネスをしてお金を稼いだりするので、そのうち変わるかもしれません。2019年に完成した比較的新しいスタジアムで、62850人の収容人数はプレミアリーグで2番目に大きなスタジアムです。(2025/07現在)いつか行ってみたい。

スローガン

 どのクラブにもある、のかはちょっと存じないのですが、クラブは公式のスローガンがあります。Jリーグのクラブとかだと今年のスローガンのような形で毎年発表されているのを見たことがありますが、スパーズではずっと同じです。

Audere est Facere

 ラテン語なので発音はよく分かりません。意味は「挑戦なくして成功なし」。ただし、これを目にする機会はあんまりなくて普段は英語に翻訳されたものが使われます。

To Dare Is to Do

 重要な試合の前とかに現地のサポーターがスタジアムで掲げたりします。スパーズの根幹にあるのはこの挑戦の精神なのです。

ライバル

 サッカー界では同じ街にあるクラブとの対戦をダービーマッチと呼びます。本拠地が近ければ比べられることも多く、現地では同じ街で応援するクラブの異なるサポーターが日頃から火花を散らしています。

 ただしロンドンにはサッカークラブが多すぎる。イングランドの1部リーグであるプレミアリーグに所属しているだけでも以下7クラブが存在します。(2025/07現在)
 ・トッテナム・ホットスパー
 ・アーセナル
 ・チェルシー
 ・クリスタル・パレス
 ・ブレントフォード
 ・ウェストハム・ユナイテッド
 ・フラム

 どのクラブと対戦する時もロンドン・ダービーと銘打って一定の熱量にはなるのですが、とはいえ多すぎるのであまり意識されない対戦カードもあります。スパーズから見て特にライバル意識の強いダービーを2つだけ紹介します。

vsアーセナル
 最も近い距離に本拠地を構える永遠のライバル、アーセナルとのダービーには特別な名前が付いています。その名も「ノース・ロンドン・ダービー」。世界での有数のダービーマッチとして知られているこの対戦は特に熱いものになります。この両クラブがバチバチするようになった経緯は正直昔のことすぎで調べてもピンとこないので割愛します。

vsチェルシー
 近年の関係性でいえば、むしろこっちの方が負けたくない。人によって認識に差はあるかもしれないけれど、きっかけは2015-2016シーズンでした。岡崎慎司擁するレスター・シティが奇跡の優勝を成し遂げたシーズンに、唯一レスターに追いつかんと粘っていたのはスパーズだったのですが、シーズンも残り数試合のタイミングで対戦したチェルシーが『自分たちの順位には関係ないけど、スパーズに優勝されるわけにはいかない』とスパーズとの試合で普段はやらない時間稼ぎとかをしたことで試合がヒートアップして少々荒れた試合になったことでその後も熱が入る関係性になりましたとさ。

選手・監督

 2025年7月中旬時点の情報になります。ちょうど移籍期間ということもあり、いろいろ変化があると思いますが、チームメイトのことも知ってほしいです。

監督

 デンマーク人のトーマス・フランクという人です。昨年までは日本人にも馴染みのあるアンジェ・ポステコグルーが監督でしたが、シーズン終了時に退任となり、2025年6月に就任したばかりの新監督です。なのでスパーズでどんな戦い方をしていくのかは一緒に見ていくことになります。

 昨年までは同じロンドンにあるブレントフォードというクラブの監督として7年間指揮を取っていました。2部リーグにいたブレントフォードをプレミアリーグに昇格させ、残留だけでなく着実に順位を上げてきたその手腕が評価されてスパーズにやってきました。

キャプテン

ソン・フンミン

 2023年から、韓国代表のソン・フンミンがキャプテンを務めています。ソンは2015年から在籍しているクラブ最古参の一人で、クラブの歴史に名を残すクラブレジェンドと言える選手です。2021-2022シーズンにはアジア人で初めてとなるプレミアリーグ得点王にも輝きました。ポジションは左ウイングやセンターフォワード、シュートの上手さは世界トップレベルです。

 明るく人懐っこい性格で特にキャプテンになってからは、新しく入ってきた若い選手と積極的にコミュニケーションをとってチームをまとめている姿がよく見られます。アウェーでの試合前にアウェースタジアムに駆けつけてくれたスパーズのサポーターの目の前までみんなを移動させて、その前で円陣を組んで一体感を作るのはソンの発明です。あれは良い。

副キャプテン

ジェームズ・マディソン
 スパーズの10番はイングランド代表のマディソンです。いわゆるファンタジスタ系のプレイヤー。スパーズの攻撃は彼から始まる。ゴールを取った後にカメラに向かってダーツを投げるパフォーマンスをします。

クリスティアン・ロメロ

 2022年にワールドカップを制した時のアルゼンチン代表のセンターバックでもあります。南米の選手らしい一瞬の戦いに全てを賭けているようなハードなタックルでスパーズのゴールを守ります。その力強さとは裏腹に頭はクールで勝つためのプレーが出来る頼もしい存在です。

どんなクラブ?

クラブの魅力

 これまで以上に主観満載の項目です。みんなそれぞれに好きになった理由やポイントがあると思うので、あくまでも超個人的な意見だと思って聞いてくださいね。スパースの魅力を一言で言うと、そのスローガンの通り「挑戦者」であるというところです。

 今でこそ『ビッグ6』と呼ばれたりすることもありますが、2000年代は『ビッグ4』と呼ばれる4クラブが優勝を争っている時代でした。その4クラブとは、マンチェスター・ユナイテッド、リヴァプール、アーセナル、チェルシーです。日本でも少しずつプレミアリーグの放送が見られるようになっていたので、どうせなら応援するクラブを決めようと調べ始めた時に、2つのポイントで考えていました。

 1つ目は、常勝の強豪クラブではないこと。今から応援することを考えると、既に強いクラブではなく、これから強くなろうとしていくクラブを応援する方が好きだなと自分では思ったのです。心理学ではアンダードック効果というらしいですねこういうの。プレミアリーグには残留できれば良いというクラブも少なくない中で、上位の巨人たちに割って入ろうとする気概を求めていました。当時のスパーズは「向こう見ずな人」を体現するように上位クラブにも盛大に撃ち合いを挑み、大量得点を奪ってはそれ以上に失点して負けるようなクラブでした。

 ちなみに話は逸れますが、クラブの理念というかプレースタイルというか、それを言葉にすると、まさにこうした攻撃的な姿勢がそれにあたると思っています。近年は守備に力を入れてそこからカウンターを狙うようなスタイルで戦っていた時期もあるので、スパースの強みはカウンターにあるという意見も見られるのですが、実はそれは一時期の話でアイデンティティ的なものは派手な攻撃にあります。それに回帰したくて結果が付いてこないのが前監督アンジェ・ポステコグルーの2年間の葛藤でした。

 戻って2つ目のポイントは、お金の使い方が綺麗であること。2000年代のチェルシーがまさにその反例なのですが、超がつく大金持ちのオーナーがクラブを買収して、そのポケットマネーで選手を買ってきてクラブを強化するやり方が好みではなかったのです。その点、スパーズの会長はまずはインフラを整備するんだということで、目先の選手獲得だけにお金をかけるのではなく、新しいスタジアムを建て、その周辺の施設も整備し、練習場やアカデミーに投資をすることでクラブの収益を安定させる方法を選びました。その一方で若くで才能のある選手を獲得し、育てて戦力にしていく方針もロマンがあって魅力に感じたところです。

 今もなお、リーグでの優勝が近いのかと言われるとそうではありません。しかしそれを目指してもがき、成長していくところが応援している醍醐味です。今クラブにいる若い才能がそれを爆発させる時がくればと願ってやまないのです。そして何より、クラブのスローガンの通り、「挑戦なくして成功なし」なクラブでい続けて欲しいものです。

近年のスパーズ

 大会のレベルの高さではワールドカップを超えるとも言われる、UEFAチャンピオンズリーグで準優勝という快挙を成し遂げたのが2019年のことでした。それをピークに歯車が狂い始め、翌シーズンからは新しい監督がきては1シーズン戦うことなく成績不振で解任となってしまう悪い循環が続いていました。

 2023年にポステコグルー監督が就任すると、それまでの数年間の守備的なスタイルを一変させる超攻撃サッカーで流れを変えます。クラブが忘れかけていた攻撃の哲学を復活させ、就任から2年目となる今年、ヨーロッパリーグ優勝という結果を残します。これはスパーズにとって実に17年振りとなる悲願のタイトルでした。

 しかしそれと引き換えに、戦術の対策をされたリーグ戦では散々たる成績に終わります。降格手前の17位という史上最低の順位になってしまいました。優勝と17位というクラブの経営陣を悩ませる結果を残したポステコグルーは退任が決まり新監督トーマス・フランクを迎えて新生スパーズが始動するところです。

今とこれからのスパーズ

 念願のタイトルを獲得し、新監督を迎えたタイミングです。どんな戦い方を選びそこにはどんな選手が評価をされるのか、まだ誰にもわかりません。わかっているのは今のスパーズはチームの再構築の段階にあるということです。チームの大多数は20代前半の若いチームであり、そこには10代の選手だって何人もいます。若手の伸び代に賭け、数年単位でまた強いチームを作っていこうというのが今の状況です。フランク監督は攻撃的なサッカーがしたいと就任後のインタビューで語ってくれました。それを信じて期待していようと思います。

そのほか

日本のスパーズサポーター

 数とか熱量とかを定量的に測る方法がないので体感ですけど、思っているよりはいるようです。2024年の夏に国立競技場でヴィッセル神戸と対戦した時は6万人収容のスタジアムがスパーズサポーターで一杯になり、現地さながらの声量でチャントが歌われたことが話題にもなりました。あれは本当に凄かった。あの日までこれほどのファンが日本にいるなんて知りませんでした。

 あの国立での一戦以降、日本各地で有志のサポーターグループが立ち上がっているようです。Xでは観戦会の告知も多く見られ活発に活動されているようなので足を運んでみるのも良いかもしれません。

スパーズジャパンについて

 スパーズの情報を日々追いたいのなら、スパーズジャパンがおすすめです。リンク貼っておきます。海外の記事を日本語に翻訳してくれる活動を中心に精力的な情報発信をしてくれています。Xでも15万人のフォロワーを抱えるスパーズの一大メディアとなっております。

http://spurs.sc

さいごに

 これを機にスパーズを追いかけ始めてみようというみなさん。今はとても良いタイミングだと思います。なぜなら昨年は残留したチームの中では最下位の17位だったので、今年は上がるしかないからです。高井も含めた若い選手の成長とともにチームが強くなっていく楽しみをぜひ一緒に味わいましょう。

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