UEFAスーパーカップ、パリ・サンジェルマン戦を終えていよいよ始動したスパーズの2025-2026シーズン。今年は何を目指し、どう戦うのか。
低い目標だと思う勿れ
トーマス・フランクを新監督に迎え、長年の功労者ソン・フンミンとも別れ、新時代が始まっていくスパーズの今年の目標を考えよう。大学のように評定をS・A・B・C・Fと分けてみます。不合格なのはFだけです。
評定S:いずれかのタイトルを獲得 or チャンピオンズリーグ出場権獲得
評定A:ヨーロッパリーグ出場権獲得
評定B:ヨーロッパカンファレンスリーグ出場権獲得
評定C:トップ10フィニッシュ
評定F:ボトム10フィニッシュ
まあ昨年はSラインでも許されなかったんですけどね。
基本的にはタイトルを取れれば大成功のシーズンなのは変わらず。いちおう世間的にはタイトルにも重みに差があって、上からチャンピオンズリーグ、プレミアリーグ、FAカップ、カラバオカップとなりますが、どれでも評定Sで良いと思います。ちなみにスーパーカップはタイトルなんだけどここでいうタイトルではないと思います。取れなかったんで蛇足ですが。
優勝は高望みです。加えてリーグ戦で4位か5位までに与えられるチャンピオンズリーグ出場権獲得も、現時点では高い目標だと言わざるを得ません。リヴァプール、アーセナル、シティ、チェルシーは遠い先、近年ではヴィラとニューカッスルも安定して強くて去年のフォレストのようなブレイクチームも出ているプレミアリーグの競争力を甘くみて、目標設定を誤るのは良くないかと。ハナから優勝には興味がないとかいうわけじゃない。もちろん狙える限り上へ上へという戦いはしたい。でもここで、チャンピオンズリーグ出場権は絶対だ、みたいな皮算用をし始めると、また簡単に監督を変えるクラブになってしまう。
いろんなメディアでスパーズの展望が語られていて、そこでよく聞くなと思うのが「フランク新監督は前任のポステコグルーとは真逆の監督」というようなセリフ。ところでコレ、誰が就任しても同じことが言われていると思いません?多分、自分のやり方に選手を合わせるポステコグルーに対して既存の選手でのベストを見つけるフランク、という意味で言われているのだと思うけど、例えばモウリーニョなら攻撃のポステコグルーと守備のモウリーニョとなるし、グアルディオラが来ていたとしても、勢いを重視するポステコグルーと規律のグアルディオラとか言ってると思う。何が言いたいかというと、それくらい前任者は特殊だったということ。これまでの積み重ねの上にフランクは仕事ができるわけじゃないということ。
良い意味で言うんだけど、ポステコグルーの2年間はスパーズの土台になりかけていた何かを破壊して更地にしてしてくれた時間だったと思う。攻撃的であることをアイデンティティにしているクラブが、何年も受身からのカウンターだけをやってきて、方向転換しようにも出来ずにもがいていたところにやって来た幸福な災害だった。ボールを握って攻め続けるサッカーが好きなんだという精神性だけをクラブに残し、具体的なものは残っていない。守備の整理も再現性のある攻撃も、セットプレーの原則すら何もないところから新しいスパーズを形作っていくのが今年のフランクの任務だ。幸いにも守備とセットプレーは早くも光が見えている。でもそれだって、まだまだ最低限を伝えただけのはず。どんな相手にも臨機応変に対応したり、阿吽の呼吸で守れるようになるには時間がかかる。
攻撃に関してはもっと大変だと思う。本来サッカーは守備よりも攻撃の方が難しい。この2年間はサイドの深い位置からの高速クロス一本槍で戦ってきたチームに引き出しも柔軟性もありはしない。単純なショートパスですら怪しい時があるほどに。後ろからどう繋いでいくのか、ロングボールを蹴った後にどう拾うのか、奪った後のショートカウンターの原則、ゴール前で崩す時のポジショニング、やることは山ほどある。これは自信を持って言うけど、シーズン始まってしばらくの間は個人技とセットプレー以外の再現性のある攻撃の形は見られないと思う。少しこれかなと思う形があってもすぐに出来なくなる。何パターンもあって相手を惑わせることが出来るまでは、プレミアのレベルではすぐに対策されるからね。
シーズンが始まれば、戦術的な練習をする時間は限られたものになるので、そんなに毎週毎週おどろくような変化が見られることを期待しない方がいい。一つずつ求められていることを実戦で出来るようになっていき、気がつけばたくさんの引き出しがあるようになればいい。喋っているうちに触れるのを忘れていたんだけど、だからこそのトップ10フィニッシュで十分であるとしてみたのです。怪我人が多かろうがポステコグルーが強情だろうが、我々は17位のクラブなのだ。7位も順位を上げれば普通はサプライズの部類に入る。誰かが言い出したBIG6なんていう呼称を間違ったプライドにするのはよくない。ロマンを追うのではない現実派の監督と共に着実なチーム作りをしよう。
最後にボトム10なら不合格判定と書きましたが、もしそうなっても個人的にはシーズン終了時点での期待感で判断したいなとは思う。ここで書いたように本当に今のチームはぐちゃぐちゃで、プレー原則を身につけるのに時間がかかり、やっと終盤に勢いとまとまりが出ましたなんてこともあるので。ただ現実はサポーターから不満が出てレヴィが解任としてしまう気がするのでボトム10をアウトとしただけです。
開幕ダッシュを決めたとしてもフランクに過度な評価をするのは早いですよ。それが後の不満の種になるから落ち着いて。ポステコグルーだって就任後瞬く間にチームを変えて、10戦負けなしで走ったのを忘れないように。こんなにすぐにチームを変えてフランク凄いという意見もわかるが、冷静になった方がいい。去年の後なら誰がやっても大きく変わるから。
さあ、今年もフットボールのある一年を楽しみましょう。