2026年2月11日、トッテナム・ホットスパーはトーマス・フランク監督の解任を発表しました。この時点で後任が決まっていたわけではないらしく、いくつかの検討と交渉を経て新監督はイゴール・トゥドールに決まりました。Who is トゥドール、全然知らない名前です。監督歴を調べると、マルセイユ、ラツィオ、ユベントスと立派な名前が並んでいました。マルセイユ時代にはスパーズとの対戦もしているらしい。まあ覚えていないですね。特徴的なのはほとんどのクラブで1年以内に退任しているというところ。どうやらシーズン途中に就任して、立て直して揉めて辞めるみたいなことが多いらしいです。つまり火消しのプロフェッショナル。今回のスパーズとの契約はシーズン終了までの一時的なものらしく、まさにぴったりの人材と言えるかもしれません。
そんなトゥドール新監督がどんな人なのかはさておいて、ワタクシなりのスパーズ改革案をご提出させていただきます。この話は実は年末年始くらいには考えていて、ずっと書こうとは思っていたのですが、いかんせん普段の試合レビューすら追いついていない状況なのでタイミングを逃し続けていました。幸いなことに悲しいことに、1ヶ月半前に構想していた時と状況はあまり変わっていません。なので新しい監督に届くように新チーム始動前にお送りします。半分は真面目に半分はエンタメです。
まずは問題点を整理しましょう。ここまでうまく行っていないとあれば、特定の一つの理由が全てだということはあり得ません。それはわかった上で今回の講演会をはじめます。
どのクラブもそうであるように、決定権を持つフロントは不振の原因を監督に集約させて解任という形で問題を解決したような気になる。ポステコグルーが解任された時の記事にも書いたように、今のスパーズの低迷は監督の問題だけではありません。フランクは半年もいたのに攻撃やビルドアップの形がまるで見えてこないというような意見をSNSではよく見かけるけど、これがフランクの問題だけだったとは思えないのです。なんかもうポステコグルーの時のことは過去の記憶として美化されているようなんですが、ポステコグルーが楽しい攻撃サッカーをしていたのって、2年間のうち最初の3ヶ月だけだからね。そこからはずっとピッチ上では攻撃どころがボールを前に運ぶことすらままならない冷めた時間が流れていたのをもう忘れたのだろうか。
ポステコグルーは彼の色として、サイドバックを内側でプレーさせる、雪崩れ込むように攻撃に人数を割く、サイドを攻略して低弾道のクロス、というのがありました。逆にいうとそれしかなかった。守備やセットプレーには興味を持たず、攻撃的なスタイルと言いつつプランBはない。サイドを攻略するという一本槍なのに、サイドの選手が仕掛けやすいようにボールをそこまで運んでいく方法も確立されることはなかった。なので相手は中央を捨ててウインガーにマークを付け、徹底的に縦突破を警戒すればスパーズ対策は終わりだった。そんな攻撃偏重の反動でフランクはまず守備とセットプレーを整備した。ミドルシュートに弱いという弱点こそあったものの、昨年までに比べたらだいぶ変わった部分のはずだ。ポステコグルーはサイドからのクロスに全てを賭け、フランクは守備とセットプレーに全てを賭けた。前者は2年間を与えられ、後者は半年だけだ。流石に降格が見えてきたので解任は致し方なしかもしれないが、フランクが何もしていなかったわけではないと思う。少なくとも頑固に信念だけでチームを変えようとして日々悪化していたポステコグルーに比べると、フランクはダブルトップ下を試したり、スリーバックを試したりと試行錯誤は見えた。不運にも上手くいきそうな兆しが見えるたびにキーマンが怪我をして継続できなくなってしまっただけだ。あ、色々言っていますがどっちの監督も好きですよ。今のスパーズの問題は監督にはないと思っているの派なのでむしろ一生懸命やってくれたことに感謝をしているくらいです。
読者の皆さんは耳にタコだと思いますが、ポチェッティーノの終盤以降のこの6年間でスパーズは変わらぬ問題を抱えている。新しい監督がやってきて、自分のやり方をこうだと示してくれてもピッチ上でそれを選手が体現できていないことです。いや、もっと厳しい言い方をすれば体現しないことです。出来ないのではなく、やらない。なんか少し脱線するんだけど、2010年代の躍進を経てメディアにビッグ6と括られることになったことで選手たちが傲慢になったよね。ビッグ6というブランドがあるから選手が来てくれるようになったという側面もあるけど、その分選手がハングリーさを失ってしまった。ハングリーさと言うのは適切じゃないかな、チャレンジャーであるというメンタリティがなくなってしまったと言う方が合っているかも。がむしゃらさとか献身的が求められる時に、自分のことだけを考えている選手が増えたというか。チームが上手くいっていないのは、チームメイトが悪いと思っているような振る舞いが目につく。自分はエリートなんだから、自分が悪いわけではなく、他の選手たちの動きが悪いんだという感情が心の底にある。そんなエリート意識の高さが悪の半分、もう半分は矛盾するようだけど、自分が勝敗の責任を負っていないと思っている人任せな選手が多いこと。これはケインとソンというスーパースターを抱えていた弊害なんだけど、自分はバランスを取った無難なプレーをしていればスターが試合を決めてくれたという時期が長かったことで育たなかった部分だと思う。まあ共通しているのは他責思考、責任感の欠如です。
話を戻すと、監督の方針に従わない選手が増えました。わかりやすいのはやはりポステコグルー期の終盤です。あれだけ攻撃的であれという監督の元で、ボールを握っている局面で選手がボールを受けにいかず前にも出て行かない。そうした姿勢がチームに蔓延る病なんだと監督交代の時に思っていて、それがやはりフランク体制になってからも再発した。就任して最初の頃はまだ良かったのに、徐々にボールを怖がるようになり、リードされている展開でスローインを誰も受けに行かず味方のサポーターのブーイングを浴びていたのは一度や二度ではありません。ディフェンスラインでボールを回しているのに前線が顔を出さずにサポーターの怒りの声でしょうがなさそうに選手が動き始めるというのもよく見る光景になりました。そうしたサポーターの反応をくらっている時の選手の顔は、だって他の選手が動かないからパスが出せないんだと言わんばかりの表情をしています。
ボールを受ける。攻守の切り替えで走る。パスやドリブルで相手を崩すための勝負を仕掛ける。こんな当たり前に思えることが、スパーズの中には存在していない。長くなりましたがここからが本題。スパーズの改善案はこれら当たり前の行動が出来る選手だけを起用していくということです。ミスや質には目を瞑り、責任感を持ってピッチに立てる選手を選んでいきたい。相手の影に隠れている選手や自分が奪われた時に頭を抱えている選手、味方がボールを奪った後に前に出て行かずに一息ついている選手を許しているようでは、永遠に強いチームにはなれません。これら基本的なことが出来ていないのなら、どれだけ素晴らしいプレーを見せる瞬間があっても起用しちゃダメだと思う。ボール持っている時は上手いからと良くない部分を許していることがスパーズに蔓延する甘さです。対象はトップチームの選手たちと、人がいない時に登録されているようなアカデミーの選手たちくらいまで広げてもいいと思う。積極性と責任感を持ってプレーしていれば、チャンスが貰えるんだと思えないとチームの雰囲気は悪くなる。特権階級の選手は要りません。
評価ポイントの優先順位はこうです。
1.攻守の切り替えをサボらないこと
2.球際で戦うこと
3.ボールを受けに顔を出すこと
4.相手ゴールに向かっていくプレー選択をすること
5.パスやドリブルの成功率
プレーの質を評価するのは後にしましょう。まずはフォア・ザ・チームなプレーをすることです。当たり前と思われることが当たり前にやれないと試合には出られないという規律がまずは第一歩だと思うのです。では一つずつ解説します。ちょっと疲れてきたので最後まで持つでしょうか。頑張れ自分。
1.攻守の切り替えをサボらないこと
ことプレミアリーグではこれ重要ですよね。攻守のうち特に気になるのは、守備から攻撃への切り替えです。基本的には前からのプレスを頑張っていて、相手陣内で奪えた時はそのままショートカウンターが発動できるんだけど、引かされてしまい自陣でボールを奪った時に何故か周囲の選手がピタッと止まる謎現象が起こりがち。ロングカウンターは成功率も低いしエネルギーを使って大変なのはわかるけど、だからといって前に走る選手がいなければ奪った選手がすぐに相手に囲まれてそれで終わりです。というかロングカウンターを打つ意識がないのに引いて守っているのはなんでだろうか。前に出ていって相手陣内を目指さないとまた守備の辛い時間が続くだけだというのに。その場に留まっていて許されるのは基本的にはGKとCBだけだ。自分は守備的ボランチだからみたいな逃げのスタンスを許すな。ボールを持つ味方を助けるために、前に走ってボールを呼び込む選手をもっと評価していこうじゃないか。これなら技術に優れているかどうかは関係ない。誰でも出来ることだ。
2.球際で戦うこと
最近の試合を見ていてよく思うのは、せっかく頑張ってプレスをかけているのに寄せているだけなことが多いなということ。自分の役割は相手の近くによってパスコースを限定することだけだと思っている選手が多いので、プレスには行っているはずなのにボールが奪えずにずるずると下がり押し込まれてしまう。ちゃんと体をぶつけて五分五分の戦いをすること、それがこの2つ目の項目です。それなりに寄せていることや足先だけ突きに行ってかわされているだけなら評価対象になりません。ボールは奪うものです。こうした戦う姿勢は周りにも伝搬する。誰かが熱くなればそれは影響するし、みんながゆるゆるとプレーすれば自分もこのくらいで良いかと緩むのです。奪い切れるかどうかは二の次で戦いにいくかどうかを評価しよう。
3.ボールを受けに顔を出すこと
誰しも自分の得意なプレーや得意なプレーエリアがある。ウイングなら高い位置でサイドに開いた状態でプレッシャーなくボールをもらいたいだろうし、ボランチの選手は低い位置で前を向けるタイミングが良い。決してペナルティエリアまで走り込んでニアゾーンを攻略するのが得意ではない。が、そうした得意不得意を超えて味方を助けるために必要なプレーをしてくれる選手を讃えたい。ボールが運べていないのなら、センターフォワードがボランチの位置にまで下がって引き出してまた上がっていけば良い。膠着しているのならサイドバックが相手の裏を狙って走ったっていい。そうした献身が連続すると信じられれば、中盤の密集エリアにも顔を出せるようになる。絶対に誰かが次のパスコースを用意してくれていると思えるのなら怖いことはないはずだ。
4.相手ゴールに向かっていくプレー選択をすること
これが4番目の優先順位に入っているのは、ボールを持っている選手が下手だから横や後ろにプレーをしてしまうと断ずるのは違うと思っているから。1〜3までが全く存在しない中では、前を向いても出すところがないのです。だから一か八かのロングボールを蹴るしかなくなる。ボールが運べずに後ろで回している時にサポーターが前に行けよと声を上げている試合が何度かあったけど、あの場面あの瞬間にセンターバックが消極的だからボールが前に出なかったわけではないなと試合中も思っていた。中盤から前がみんな誰かが運んでくれるだろうと自分のお気に入りのエリアに立っているだけで出すところがなかっただけだ。ウインガーがドリブルを仕掛けないことを主に昨シーズンは批判されてたのをよく目にしたが、ウインガーがドリブルの選択肢しかない中で勝負するのはだいぶ厳しいと思うのだ。サイドバックがオーバーラップしてくれたり、中盤が裏に飛び出したりして、味方を使う選択肢があってこそのドリブルだと思う。この4番の項目も大事だが、まずはボールをどう扱うか以前の問題に目を向けよう。
5.パスやドリブルの成功率
今はこれ、どうでも良いです。このレベルの選手たちが意味不明なパスミスを連発しているのはその選手個人の技術的な部分が問題なのではない。プレーの選択肢がなく視野が狭くなり余裕がなくなっているからこそ起こる環境的な要因だと理解しなければ、一向に状況は変わらない。こう何年にも渡って同じようにビルドアップができず、パスが繋がらず攻撃に停滞感があることが誰か個人だけの問題にあるわけがない。正直言って選手の質を議論できる段階にはないという主張をしています。もちろんリーグ優勝を出来るだけの選手が揃っているのかと聞かれれば胸を張って応えられるわけじゃないですが、別にそんな0か100かみたいな話じゃないからね。
なんとここ最近どころかここ数年で一番長い記事になってしまったかもしれない。途中の見出しもつけずに一気に書いたので読みにくかったらすみません。これを書こうと思った年始の頃はここまで降格が現実的じゃなかったので、今は結果を度外視してでもと言いたかったのですが、状況はだいぶ変わってしまった。それでもここに書いたことは大事なことだと思うんですよ。たぶんあるあるの解任ブーストで一時的に良いプレーが増えることでしょう。そしてその刺激に慣れた選手たちはすぐにまた相手の後ろに隠れるようになります。降格さえしなければ良いシーズンだと割り切って諸悪の根源を断ちに行きませんか。奥底の病を治療しないとどの監督がきてもしばらくして選手がわかりにくくサボり始める繰り返しになるでしょう。トッテナム・ホットスパー大改革案。ぜひよろしくお願いいたします。