2025-2026 プレミアリーグ 第5節
Brighton & Hove Albion 2 – 2 Tottenham Hotspur
Stadium:アメリカンエクスプレス・スタジアム
得点
8分:ヤンクバ・ミンテ(Seagulls)
31分:ヤシン・アヤリ(Seagulls)
43分:リシャルリソン(Spurs)
82分:ヤンポール・ファン・ヘッケ(Spurs)
トッテナム・ホットスパー
FW オドベール(72’ジョンソン)、リシャルリソン、クドゥス
MF ベンタンクール(61’シモンズ)、パリーニャ、ベリヴァル(89’グレイ)
DF ウドギ、ファンデフェン、ロメロ、ポロ(89’スペンス)
GK ヴィカーリオ
sub:キンスキー、ダンソ、サール、テル、スカーレット
ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオン
FW ルター(75’ウェルベック)
MF 三笘、バレバ(46’ゴメス)、グルダ(63’ミルナー)、アヤリ、ミンテ(75’コッポラ)
DF カディオグル(85’ウィーファー)、ダンク、ファンヘッケ、フェルトマン
GK フェルブルッフェン
sub:スティール、ボスカリ、ツィマス、ワトソン
どちらかというとポジティブ
欧州サッカー名物過密日程が始まりました。とはいえ対戦相手まで考えるととびきりハードというわけでもない。特に次はカラバオカップで相手はリーグ1(3部相当)のドンカスターなので、大きくローテーションをすることと思います。なのでむしろこの試合でいくつかの変更があったことが意外だった。これは現時点では先発控えが固定されていないことを意味する前向きなものだ。スペンス、シモンズ、サールに変わって、ウドギ、パリーニャ、オドベールが先発入りした。
まずはウドギ、大きなインパクトでしたね。味方を使い、使われながらグイグイ前に出ていくプレーは圧巻だった。比較的足元で受けたがるスペンスと違い、ウドギはウイングを追い越して裏を狙ってくれる。オドベールはその上がりをシンプルに使ってくれるのでいい連携で攻められていた。サイド攻撃全般の課題として、クロスのタイミングで中に人数がいないのでチャンスに繋がらないというものが左右両方からの攻めにあったので、この辺のバランスを調整できれば今後はより生きてくると思われる。ただし左利きを生かして縦に行くプレーは力強いのに、縦を切られると途端に幅が狭まるのは相変わらずのままだった。伸び代ですねえ。
そしてオドベール。こちらが今日のメインテーマ。良いか悪いかでいうと良かったけど期待したほどではなかった。というのが多勢の感想かなと思う。本当は「ウィルソン・オドベールが使われない理由」というタイトルで1コラム書こうと思っていたんだけど、試合が多くて時間が取れないのでやめて今日書きます。
オドベールは去年の夏にやってきて、ポステコグルーの下で、ほぼ先発級の扱いで起用され始めた頃に大きな怪我をしてしまいシーズンを棒に振ってしまった。テクニカルなドリブルスキルは期待感を抱かせるものだったので、ソンが抜けた左ウイングの1番手として楽しみにしているファンも多かったはずなのに、ここまでの出場時間はかなり限定的だ。そのためもっと使って欲しいという意見をよく見かけるのだけど、今日の試合を見て使われなかった理由がわかったように思う。というか僕の中ではなんとなく答えがあったのだけど、スタメンから70分ほどプレーした後なので伝わりやすいと思いここで言います。オドベールが起用されないのは「やりたいことしかやらないから」です。
つまりブレナン・ジョンソンと同じです。ジョンソンが『ゴール前でツータッチ以内にシュートを打てるタイミング』でしかプレーしたがらないのと同じように、オドベールは『サイドでいい形でボールを受けた時にドリブルを仕掛ける』ことしかやらないのです。2人とも守備はなんとなくだし、球際のバトルも足先だけ。空中戦は諦めている。ビルドアップの中継地点になる勇気はないのでいい形で回ってくるまでは相手DFの後ろに隠れていて、それでもパスが来る時にはダイレクトにバックパスを選択するか、何もできずに奪われるかです。僕らはシティのジェレミー・ドクに見慣れていて、彼はどんな時でもボールに触れれば近くの1人2人は抜きにかかる。オドベールも同じタイプの選手だと認識しているので、仕掛ける回数の少ないオドベールを物足りなく感じてしまうのです。
オドベールは選択しないといけない。ドリブルもしつつチャンスメイクをするシモンズのようなタイプを目指すのか、斜めに入っていくソンのようなウイングストライカーになるのか、はたまたドクのように必ず1人は抜いてくれるようなドリブルのスペシャリストになるのかを。まあここにあげた3パターンが全てとは言わないまでも、今のまま気まぐれにドリブルをするだけの選手では、計算の出来る中心選手にはなれません。
それからもう一つオドベールに抱いている懸念点がある。説明しやすい欠点は上記の部分なんだけど、どちらかと言うとこれから言う方が起用されない理由としては大きいのではないかと思っています。それは、オドベールのプレーから、勝敗への執念が感じられないというところです。さっきの話を別の視点で見ているという感覚でもあるんだけど、オドベールのプレーは全体的に淡白で、自分のドリブルの成功と失敗以外には関心がなさそうに見える。今日の1失点目はオドベールがドリブルであっさり奪われたのに起因していて、味方がプレスをかけている間に自分は後ろのリカバリーに入っていたはずなのに、ミンテをマークしていたわけでもなく簡単に裏を取られ、そこからの追走にも必死さは感じられなかった。もしこうした熱量の部分をフランクも感じているのだとすると、これまでの扱いも理解できる。瞬間的にはとても上手いけどチームのために、勝つために戦ってくれる選手ではないとなると信頼して送り出すのは難しいよ。監督だって人生賭けているんだから。
そんなことを考えている時間に投入されたシャビ・シモンズが素晴らしかったので、より対比して見てしまった。シモンズは出てくるやいなや、自分がチームを勝たせるんだという覇気を纏ってプレーしていた。危ない奪われ方も少しはあったが、あの姿勢で戦ってくれる中で生まれるミスなら納得できると言うものだ。アヤリのミドルシュートのきっかけになったベリヴァルの中途半端なクリアに対する非難が少ないもの、ベリヴァルの試合を通じた戦う姿勢に皆が感銘を受けているからだと思ってる。常々思っていることなんだけど、信頼とは『この人はきっとドリブルを成功させるだろう』ではなく、『全力で向き合ってくれる人のするミスとなら心中できる』というのが本質なんじゃないかな。
僕らは特定の誰かに頼ったチームになる功罪を学んできたはずだ、かつてケインとソンに攻撃を任せ切っていたことで誰も責任を負いたがらない集団になってしまったことを忘れてはいけない。シモンズが上手いからと言ってシモンズ頼りになるわけには行かないから、オドベールやジョンソンのような姿勢には厳しくいたい。
ちなみにここまで相当オドベールについて言ってきたけど、久々に先発した20歳の選手なのでそれはちゃんとわかっているつもりです。あくまでも課題の提言をしているだけで、良いプレーは見られたと思うよ。終盤に出てきたジョンソンは酷かったけどね。右からクロスが上がっていたから仕留められる選手が欲しかったんだと思うものの、あれだけ何もしないとなると、まだ不器用なりに自分がなんとかするんだという姿勢で戦ってくれるテルに賭けて欲しいと思っちゃうよ。
失点は偶発的なものだった気もするので、むしろそこから2点を追いつけたことをポジティブに捉えたい。反省するなら追いついた後になぜか失速したところかな。あそこは満足せずに逆転を目指す雰囲気でいて欲しかった。全体的にはビルドアップの改善も見られたりするので良かったと思う。勝ちきれなかった試合ではあるのでこんなこと言うべきかわからないけど、見ていて楽しい試合でした。