少しずつ光が見えてきた
お久しぶりです。12月は師走とも呼ばれ、いつもは落ち着いている僧侶でも走り回るほどに忙しい月だと言われておりますが、それを人生で初めて体感しておりました。まだしばらく忙しい時期が続きそうで、安定して書けるかわかりませんが、ひとまず年末年始の束の間にゆっくりした時間が取れています。今回はパレス戦のレビューの前に、飛ばしてしまった3試合について軽く触れていきたいと思います。覚えている範囲で。
まずはスラビア・プラハ戦から。と言いたいところだけど、ちょっとだけブレントフォード戦からの流れを振り返る。およそ1ヶ月ぶりの勝利となったブレントフォード戦は、フランク体制序盤のターニングポイントの一つになった。開幕から4ヶ月に渡って今出場できる戦力のほぼ全てを活用しながら、最適な11人を探り続けていた。主にボランチの組み合わせと、左ウイングの正解を決められずにいろんな実験を繰り返してきたが、ようやく現時点の最適解を見つけたのがこの試合だ。ボランチはディフェンシブな役割ならパリーニャよりベンタンクール、相棒には開幕期には最も序列の低かったであろうグレイがハマった。左ウイングを勝ち取ったのはコロムアニだ。ボールへの積極性と試合への関わりの意識が高い11人が選ばれたのだと思っている。これに加えてベリヴァルまでの12人がフランクの選ぶ現状のベストメンバーだ。
そしてスラビア戦の選手チョイス。この試合は過密日程の中で少しでも選手を休ませたい試合という位置付けになる。わかるのは先述の12人の次の序列。中盤の次点はジョアン・パリーニャ、前線はウィルソン・オドベール。サールとテルとこの試合にはいなかったジョンソンは信頼を勝ち取れていない。個人的にはサールとジョンソンが今の序列になってしまう理由はわかる。テルはもう少し出番があってもいいとは思うが、プレー自体の精度の粗さは目立つので長時間起用するのが躊躇われているのだろうと思っている。そして試合の内容については記憶が怪しいけれど、オウンゴール、PK、PKというスコアから抱く印象よりは3-0が妥当と言える良い試合をできたんじゃなかったかな。はい次。
振り返りたくもないノッティンガム・フォレスト戦。夏のギブス=ホワイトの一件に加え、ヌーノ&ポステコグルーというスパーズOB監督を雑に扱ってくれたこの半年で一気に負けたくない相手になった。レビューは書けなかったけど書くつもりで残していたメモから3つご紹介します。
”開始10分の出来がそのまま”とあります。なんか最近の試合に共通してるなと思ったことなんだけど、開始10分に抱いた印象が最後まで変わらない試合ばっかりじゃないですか?いい入りをした試合は良い戦いをするし、最初から重い雰囲気だとそれを払拭することのないまま試合が終わる。フォレスト戦は相手の勢いにタジタジになるスタートでそのまま90分が過ぎたし、あとで書くリヴァプール戦は9人になりながら勇敢に戦った試合の印象があるけれど、立ち上がりからかなり良かったからね。シモンズのせいでどうにも出来なくなっただけで。監督の問題なのか選手問題なのかまだわからないが、試合中の修正がもっとできるようにならないとなと思います。
それから”ラインが低くてプレスが無駄になってる”です。前から行こうという意識はあって、前線はそれなりに頑張って追っているのに最終ラインが低い位置に設定されているために中盤がスカスカでプレスが機能していなかった。ハイプレスを志向するなら最終ラインももっと上げて、相手のセンターフォワードへの縦パスにはこっちのセンターバックが潰しに出るくらいに前ががかりじゃないといけない。その辺がまとまっていないから、前線の頑張りが相手のためにスペースを作る動きになってしまっていた。
最後に”グレイを責めるべきじゃない”。まあこれはみんなそう思っているかなと思います。手痛いミスだけど反省して学んでくれれば良い。それより勇気出して難しい場所でボールを引き出そうとしてくれた選手に文句を言ってしまえば、ボールを貰わないほうが正解だと選手たちが認識するだけになる。いいチャレンジには拍手を。今はまだそういう時期です。
最後にリヴァプール戦を。これはね、本当にもったいないですよ。大苦手にしているリヴァプールを倒す絶好のチャンスだったのよ。昨シーズンの強さとはうってかわってスランプに陥り、武器だったウインガーも軒並み不在の今こそ対戦するには一番いい時だった。前半からいい入りをして、いつもなら防戦一方になるような相手に互角以上の戦いが出来ていたというのにシモンズの不用意な退場で全て壊れてしまったのは本当に残念。一生懸命なプレスの結果だとか、少々厳しい判定だったなというのはありはするものの、これはグレイのミスのようなチャレンジの結果だという擁護をするのは違うプレーでした。
2点目を取られて諦めのムードが漂う中で一人気を吐く途中出場のリシャルリソンがたった一人で空気を変えた。リシャルリソンの見せた気迫に勇気づけられたトッテナム・ホットスパー・スタジアムの雰囲気が、1人多いディフェンディングチャンピオンを完全に飲み込んだのは凄まじかった。だからこそ、キャプテンのくだらない退場にはサポーターはもっと怒っていいと思う。抗議と報復でイエロー2枚は許されない。しかし不可解だったのは9人になってなお、リヴァプールを圧倒し続けていたことだ。こんなのめったに見られないぞ。
何か劇的なことが起こりそうで起こらないまま試合は終わる。奇妙な満足感を持ってこの試合を終えることになったが、冷静に考えれば褒めてばかりはいられない。1人失っても2人失っても相手を押し込んだことをリバウンドメンタリティだと言って称賛している場合じゃない。たった9人でリヴァプールを圧倒できる能力を持っている君たちが普段からそれを発揮できない理由を反省するべきだ。退場者が出て失点をして、背水の陣を敷いてからじゃないと頑張れないんじゃいつまで経っても強いチームになんてなれないよ。
というわけで3試合を振り返りました。ある程度は先発が固まってきて、良くも悪くも選手間の序列が見えてきた。ボールから逃げない選手たちが揃って初めて戦術とか戦略の話が出来ると思う。フランクによるチーム作りが見られるのはまだまだこれからだ。少なくとも選手たちの持つポテンシャルだけで言えば、リヴァプールをも飲み込める可能性があるということがわかったのは光明だ。この差し込む希望の光を見失わないように進んでいってほしいものです。