2019-2020 FAカップ 4回戦
Tottenham Hotspur 3 – 2 Southampton
Stadium:トッテナム・ホットスパー・スタジアム
通算戦歴:16勝6敗3分(勝率:64%)
得点
12分:ジャック・スティーブンス(OG)(Spurs)
34分:シェーン・ロング(Saints)
72分:ダニー・イングス(Saints)
78分:ルーカス・モウラ(Spurs)
88分:ソン・フンミン(Spurs)
トッテナム・ホットスパー
FW ソン、モウラ
MF セセニョン(90’サンチェス)、ウィンクス、ダイアー、エンドンベレ(60’アリ)、オーリエ
DF フェルトンゲン(54’フェルナンデス)、アルデルヴァイレルト、タンガンガ
GK ロリス
sub:ガッサニーガ、スキップ、サーキン、パロット
サウサンプトン
FW イングス、ロング(81’アダムス)
MF レドモンド、ホイビュルク、ロメウ、ブファル(67’アームストロング)
DF バートランド、ベドナレク、スティーブンス、ウォード=プラウズ(40’ヴェステルゴー)
GK グン
sub:ルイス、ボキンズ、スモールボーン、オバフェミ
かなり危うい展開でした。
途中息を吹き返し5回戦へ
どう考えても負けていた
スタメンの発表を見ると、中盤多めの意外な構成でした。どうしたのかと思えば、ロチェルソとラメラが共に軽傷で出場を見送ったとのこと。たしかに無理をするべき試合ではないと思うのでこの判断は先々を考えると悪くはない。シティ戦で負傷したアリも大事を取ってベンチスタートです。
こちらはオーリエとセセニョンをウイングバックに置いた3-5-2のフォーメーションで、セインツは4-4-2です。噛み合わせが悪いというのはどこかに数的不利ができて、どこかに数的有利ができるということ。大抵の場合、勢いのある方が主導権を握ります。この試合ではそれはサウサンプトンでした。先週もそうだったので、この試合も、かもしれないけど。
両サイドのブファルとレドモンドが比較的高い位置から降りてこないので、スパーズのウイングバックはそれを警戒して上がっていくことができないでいました。こちらがサイドを中心に効果的な攻撃を繰り出せれば、相手のサイドハーフを下げることもできたのでしょうが、上手く攻撃を組み立てられないので相手は下がる必要がない。さらにサイド攻撃の時はサイドバックの上がってくるので、オーリエやセセニョンだけでは対応できず、センターバックの一人もつり出されてしまう。そうして試合を優位に進めていたのはセインツの方でした。
スパーズは久しぶりにツートップを採用するも、前述の通りウイングバックは上がっていけず、エンドンベレ、ダイアー、ウィンクスと並べた中盤も低めでプレーしたがる傾向にあり、前が完全に孤立してしまいました。本来ならインサイドハーフとしてエンドンベレかウィンクスがサポートに行かなければならないはずなのですが。セセニョンの珍しい斜めのランニングでセインツの裏を取り、そこから先制です。これはセセニョン良い動きでした。もっとこういうプレーは出していくべき。まだまだ遠慮がちながらも、積極的にプレーしようとする意思は見せてくれるようになってきました。
しかし流れは常にセインツで、逆転された時にはこれまでだな、と思いました。ただこのへんで何かが吹っ切れたのか、モウラが自由にプレーするようになります。アリが入ったことでセンターフォワード的な走り出しはしてくれるので、モウラがかなり下がって積極的にボールに触れる。決して得意ではない9番を任され、思うようにプレーできないことにイライラしていたように見えました。それほどにこの時間帯は活き活きとしていた。そして殊勲の同点ゴール、決めた瞬間に立ち止まり、両手を挙げての咆哮は胸に来るものがあった。基本的に控え目な表情をしている人なのに、この時は感情剥き出しだった。
モウラが引き寄せた流れのままに、スパーズの時間がやってきた。最初の交代カードながらパッとしなかったジェドソン・フェルナンデスの運ぶドリブルから、アリの美しいスルーパスがソンに通り、PK獲得です。これを確実に沈めて勝負あり。フェルナンデスは随所に技術力を見せつけるプレーがありましたが、まだ思い切ってプレーできていない。イングスに決められたロングカウンターもそもそもはフェルナンデスの適当なクロスからです。あのシーンは本当に適当に見えました。ボールが来ちゃったし、次のプレーも思い付からないからとりあえず挙げておくのがセオリーかな、くらいのキックです。だから中もちゃんと狙っていなくてあんな雑なクロスになりました。それはこのリーグでは通用しないぜ。
一番心配なこと
スリリングな試合展開の末、逆転という形で勝利をもぎ取ったこの試合はそれなりに面白かった。フェルナンデス、セセニョンもゴールに絡んだし、モウラがやっと点を取れた。でもこの試合を振り返った時に思い出してしまうのはそんなことではなかった。途中交代を告げられてからのヤン・フェルトンゲンの悲痛な表情、怒りではなく悲しみの表情、なぜこんなことに。
54分にフェルナンデスの投入が告げられる電光掲示板には5番が光る。自陣ペナルティエリア付近にいたフェルトンゲンは静かに、あまりに静かに近くのタッチラインに向かって歩いて行った。そして下を向くとそこからベンチに座るまで一度も顔を上げることはなかった。モウリーニョが一声かけるも反応はなく、ベンチに座ってからもしばらくそのままの表情で誰も声をかけることは出来ませんでした。
ビックマッチではサンチェスにポジションを取られ、今やタンガンガよりも序列を下げられている。契約は今年までであり、延長の意思がないわけでもないらしいですが、未だ交渉はまとまっていません。2012年から共に戦っているフェルトンゲンは苦しい時期を過ごしています。今日の交代は4バックに変更するための戦術的なもので、別にフェルトンゲンのプレーが酷かったわけではありませんが、それでも後半開始早々に真っ先に選ばれてしまうのは辛い。シティ戦でも出番がなく、カップ戦でも一番に変えられてしまえばフェルトンゲンのプライドはズタズタでしょう。
あんな顔は見たくなかった。あまりのことにカメラにも何度も何度も抜かれていました。フェルトンゲンにトッテナムでの未来はあるのでしょうか。契約や年齢の問題はあれど、まだまだやれる選手ではあるはず。ややスピードにやられてしまう場面は増えましたが、安定感はサンチェスやタンガンガより信頼できる。もし今年いっぱいだとしても、彼の表情の曇りを晴らす半年であってほしい。このまま終わってしまうのはあまりにも悲しいから。