2022-2023 プレミアリーグ 第2節
Chelsea 2 – 2 Tottenham Hotspur
Stadium:スタンフォード・ブリッジ
得点
19分:カリドゥ・クリバリ(Blues)
68分:ピエール・エミル・ホイビュア(Spurs)
77分:リース・ジェイムズ(Blues)
90+6分:ハリー・ケイン(Spurs)
トッテナム・ホットスパー
FW ソン(80’ペリシッチ)、ケイン、クルゼフスキ
MF セセニョン(57’リシャルリソン)、ホイビュア、ベンタンクール(80’ビスマ)、エメルソン(82’モウラ)
DF デイビス、ダイアー、ロメロ
GK ロリス
sub:フォースター、サンチェス、タンガンガ、ドハーティ、ヒル
チェルシー
FW スターリング(85’プリシッチ)、マウント、ハヴァーツ(90’ブロヤ)
MF ククレジャ、ジョルジーニョ(73’アスピリクエタ)、カンテ(85’ギャラガー)、ロフタス=チーク
DF クリバリ、シウバ、ジェームズ
GK メンディ
sub:ケパ、チャロパー、チルウェル、オドイ
やっぱりこの対戦は熱いねえ
順調この上ない開幕戦を終え、膨らんだ期待値とともに向かうはプレミアでもトップクラスに苦手な地、鬼門スタンフォード・ブリッジ。しかし今回ばかりは勝てるんじゃないかという思いはある。そこそこある。過去30年間で1度しか勝てていないというのは衝撃のデータですけど。
そんな希望はあっという間に打ち砕かれた。トーマス・トゥヘルの用意した完璧なスパーズ対策になすすべのない時間が続く。正直、ここまで抑えられるとは思っても見なかった。否応なく力の差を感じさせられた。
デザインされたハイプレス、後ろから繋ぎたいスパーズに対し、チェルシーは狙いを持ってハメにきた。ロリスとダイアーはある程度放置、スパーズのビルドアップの起点であるセンターバックの両サイドにハヴァーツとスターリングが厳しく寄せて時間を与えてくれない。マウントは守備時には一つ下がって、カンテと共にホイビュアとベンタンクールを監視する。ウイングバックは対面のウイングバックが付き、ソンとクルゼフスキにはリースジェイムズとクリバリがほぼマンマークでどこまでも追いかけてきていた。そして最大の武器ケインには基本はチアゴシウバが見ていて、落ちるスペースは一人余っているジョルジーニョが埋めている。これで後方からのビルドアップが完全に封じられた。あまりにも一方的な前半だった。
ただし苦しい時もスパーズの面々は集中力を欠かなかった。5-4-1の狭いラインを崩さないのでチェルシーはボールを持っても攻めあぐねている。保持率の差ほどに決定機は生まれなかった。これには自信を持っていい。試合を通じても3点目を喰らいそうな場面は後半のリースジェームズの突然のデブライネクロスぐらいだった。あれはとんでもないクロスだった。ハヴァーツありがとう。
ハーフタイムにどんな修正を加えたのかも分からないほどに、後半も変わらぬ展開が続く。そんな最悪の空気を打開するコンテの一手は、セセニョンを下げてスパーズデビューのリシャルリソンの投入だ。正確にはリシャルリソンの投入と、4-2-4とも言える攻撃的な選手配置の変更でこれが驚くほどの成果を見せる。
投入された瞬間から猛然とプレッシングを開始したリシャルリソンが、チームに勇気と活力をもたらした。ボールを奪い、攻め込めるようになった。綺麗な崩しではなかったが、半ば不意を突くようなホイビュアのミドルで追いついた。サッカーとはつくづく分からない。1時間攻め続けたチェルシーと10分間リズムを掴んだだけのスパーズのスコアがここで並ぶ。
結果論を言えばここで潔く3-4-2-1に戻してバランスを取ればおそらくジェイムズの2点目はなかった。ただそれはあの時には無理だったことはわかる。コンテすごいなと思ったのは、失点したことで3-4-2-1に戻したこと。4-2-4で攻撃的になれたのに、よく追いかける展開になってまた変えられるよな。
今日の劇的な同点を産んだのは新加入選手たちの輝きだ。リシャルリソンが試合の流れを変えた。コーナーを奪取したのはビスマのミドルシュートで、言わずもがなペリシッチのコーナーキックの質の高さがケインのヘッダーに直結した。両足蹴れるとは聞いていたが、本当に両足でコーナーを蹴っている。驚きと同時に、プレースキッカーの重要性を思い出させてくれる美しい軌道だった。
さて、めでたしめでたしな終幕だが、この試合の振り返りに判定の話をしないのは不自然だ。個人的な見解を記してみよう。
まずホイビュアのゴールを生む前のベンタンクールのタックルが1つ目。結論から言えばあれはノーファール。正当なジャッジだと思う。理由はシンプルにボールに触れているから。これまでも何度も相手を吹き飛ばすタックルが、ボールにチャレンジをしているという理由でフェアだと判定された場面を見てきた。少なくともプレミアではあれは取らない。とはいえボールにはわずかに触れただけで、タックルは深かった上に明らかに抜かれた後の止めに行くタックルだったので、ファールを取られても致し方ないと思う。よく審判は見ていたよ。VARではまず取られないが、肉眼では難しいジャッジだ。
個人的にはそれよりも、シュートを打った時のリシャルリソンの立ち位置のオフサイド疑惑の方が怪しいと思う。リシャルリソンはボールに関与する姿勢は見せなかったが、あそこに立っていたことがメンディに与えた影響はあると思う。これはスパーズにラッキーな判定かな。逆の立場なら文句言っていたと思うし。
そして最後のロメロvsククレジャ。あれがファールであることに異論のある人はいないでしょう。ただしゴールシーンに直結しないのでファールを取るならリアルタイムに審判が見ていたか、VARでレッドカードとするしかない。前者についてはただ見えていなかったんだろうね。でもこれを責めるのは酷だと思うよ。テレビから落ち着いて見ている僕らだって、リプレイが出るまで気がつかなかったでしょ。そしてVARだけど、コーナーの最中にお互いにやりあってのことだから、赤を出すのは難しいんじゃないだろうか。良いか悪いかで言えば間違いなく悪いけど、直後に同点弾が生まれてなければそこまで騒いでいたわけでもないでしょ。とも思う。
ま、いずれにせよスパーズにはラッキーな判定が続いた。前にもどこかで言ったけど、アーセナルとのはるか昔に生まれた根源不明のライバル意識より、ここ数年のチェルシーに対しての鬱陶しく感じている感情の方が強いので、同情する気はさらさらありません。勝点1、ご馳走様でした!