2023-2024 プレミアリーグ 第27節
Tottenham Hotspur 3 – 1 Crystal Palace
Stadium:トッテナム・ホットスパー・スタジアム
通算戦歴:83勝33敗10分(勝率:66%)
得点
59分:エベレチ・エゼ(Eagles)
77分:ティモ・ヴェルナー(Spurs)
80分:クリスティアン・ロメロ(Spurs)
88分:ソン・フンミン(Spurs)
トッテナム・ホットスパー
FW ヴェルナー(87’サール)、ソン(90’スカーレット)、クルゼフスキ
MF マディソン(87’ホイビュア)、ビスマ(90’ロチェルソ)、ベンタンクール(63’ジョンソン)
DF ウドギ、ファンデフェン、ロメロ、エメルソン
GK ヴィカーリオ
sub:オースティン、ドラグシン、デイビス、スキップ
クリスタル・パレス
FW エゼ(66’フランサ)、マテタ、アイェウ(71’エドゥアール)
MF ミッチェル、ウォートン(71’ヒューズ)、レルマ、ムニョス
DF リチャーズ、アンデルセン、ウォード
GK ジョンストン
sub:ヘンダーソン、トムキンス、クライン、アハマダ、オゾー、プランジ
「何も変わっていない」のか
先週は試合がなかったので、およそ2週間の時間が与えられてのこの試合だ。ウルブズ戦、だけじゃないが言い訳にしていた怪我人が戻り、ほぼフルメンバーで戦えるようになったにも関わらず、今のスパーズには閉塞感が漂っている。しかしそんなに悲観することもないと思っている。
開幕からの10試合はそりゃあもう最高だった。去年までの無気力守備サッカーに比べたら方向性が180度変わり、リスク管理も忘れた能天気攻撃スタイルで結果もついてくるとなれば選手もサポーターも大満足だ。離脱者が相次いだことで勢いにもブレーキがかかったが、メンバーを維持できれば今も無敗だったかというと、遅かれ早かれ対策はされていたと思う。
繰り返すがポステコグルーが目指すスタイルは去年までとは大きく違うものだった。つまり積み上げも何もなく、今年完全に1からチームを構築しているということ。何事も0から60点くらいまで持っていくのはそんなに難しいことじゃない。そこから80点、100点を目指す時には必ず壁にぶつかり、苦しんでもがいて努力を続けたものだけが自らの壁を越え、想像を超える高みに到達できる。
攻撃スタイルへの変化は劇的なものだったから、この監督はものすごいスピードでチームを変えられるんだと錯覚してしまうのも無理はないが、そろそろ我々も落ち着くべきだ。ここまでと同じペースでチームは変わらないことを認識して、見つかった課題を一つずつ乗り越えていくことだけが、強くなる方法だと認めなきゃいけない。2週間も空いたので、言いたいことが湧いてきて、コラムのような始まりになりましたが試合のレビュー始めます。
前半はワンサイドゲームと言って差し支えない内容だった。ボールを保持し、奪われても素早く回収しまたこちらの時間になる。ただしボールを持っているだけでチャンスらしいチャンスはほとんどない。ヴェルナーが抜け出した場面は決めて欲しかったが、あれはお得意のロングカウンターなので決まってしまうと課題がブレる。押し込んだ時に何もできない問題が改めて明確になり、この2週間何をしていたんだという声があることもわかっているが、「何も変わっていない」というのは間違っていると思う。
もちろん練習を見たわけじゃないので想像の域は出ないが、この試合で強く意識づけされていたことは3つある。
その1:パススピードを早めること。
その2:ボールを持っている選手が孤立しないように素早くサポートすること。
その3:ウインガーは無謀でも縦に仕掛けること。
1と2はすぐにわかった。ここ最近はスロースタートのゲームが多く、シーズン序盤に見せていた立ち上がりに圧倒するケースが減っている。原因はプレースピードが遅いこと。ハーフタイムには怒られて、後半の最初だけスピードが上がる試合も多かったが、今日は最初からやっていたし、最後までできていたように思う。3もヴェルナーがメインだけど、多少強引にでも仕掛けていこうという意識は感じられた。このチームのウイングはこうじゃないといけない。
じゃあなんで相変わらず決定機は作れないのだろうか。それはパスのテンポは上がったものの、近場の短いパスばかりだからだと思う。倉敷さんのいうところのステーションパスというやつ。パスが各駅停車ってこと。
これは明確にポステコグルーの指示なんだろうけど、頭の上を通るようなロング・ミドルのパスはほどんど見られない。遠くに展開することがあってもそれは強めのグラウンダーのパスだ。何人もを飛ばすような大きなサイドチェンジや、斜めにサイドバックの裏に落とすようなミドルパスがないので、相手からすると準備している守備ラインの前を横にボールが動いているだけになるので組織も崩れず守りやすいんだと思う。失礼なことを言っているのは承知だが、プレミアよりも守備強度の落ちるリーグでは、早く回せば相手がついて来られなくなったり、個人技で仕掛けられる選手で状況を変えられたのだろうが、ここではそうはいかない。
ポステコグルーのかつての成功体験の限界なのか、突き詰めた結果もう一段階上に行けるのかは現時点ではわからない。でも確かなことは、前節までの反省点を見つけ、改善しようという努力が見られたこと。それがある限りはネガティブに考えすぎないでいいと思うよ。
またしても逆転という結果で3ポイントを積み上げることができた。次は4位を争うアストンヴィラとの直接対決だ。順位争いもあるし、ベンタンクールの一件もあるので熱くなる気持ちはもちろんあるが、それが余計な方向に向かっても良いことはひとつもない。どうか情熱は内に秘めて4位を奪い取ることで絶望を与えよう。