ダニー・ローズの退団

2021年5月27日、トッテナム・ホットスパーはダニー・ローズの契約満了による退団を発表いたしました。

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もっとちゃんと送り出すべきなのに

 トッテナムのアカデミー出身みたいな雰囲気もなくはない選手ですが、リーズ・ユナイテッド育ちのローズ。スパーズにやってきたのは17歳の時だそう。最近はそんな若い選手の獲得って聞かなくなったね。

 当然いきなりプレーできるわけもなく、レンタルを繰り返していた。あの頃の左サイドバックはベノワ・アス=エコト。控えはなんとギャレス・ベイル。そんな争いだった。

 ローズのスパーズデビューは2010年だった。なんといきなりのノース・ロンドン・ダービー。今や7位と8位だが、当時のアーセナルはもっと強かった。そんな試合で少年のような顔をしたローズという知らないサイドバックが出てきて、そしていきなり豪快なロングシュートを決めるもんだから一躍スターになった。定着はできなかったけども。

 長いレンタル修行からチームに居場所を確保できたのは2013年からだ。あの年はベイルがレアル・マドリーに行った年。アス=エコトはまだいたけど、ローズがポジションを取った。

 ちなみに獲得時はもっと攻撃的なポジションの選手だったらしい。スパーズではずっとサイドバックだが、その片鱗は至る所に見えていた。ボールの扱いがうまく、攻撃的な姿勢は年々強まっていく。小柄ながら体は強く、当たり負けすることも滅多にない。

 2015-2017の2年間はダニー・ローズの全盛期。反対サイドのカイル・ウォーカーと合わせてプレミア最高のサイドバックだった。チームがスリーバックを採用し、初めてのウイングバックで起用されても遜色ないパフォーマンスを見せていた。

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 いやほんとにあの時のサイドバックの頼もしさといったらなかった。ローズとウォーカーがいるだけでサイドの攻防はこっちのものだった。ここだけは絶対に負けないという確信すらあった。あの2人を超えるサイドバックはそれ以降出てきていないし、当面見つからないんじゃないだろうか。

 そんなローズのキャリアが壊れてしまったのが、2017年の怪我だった。その離脱が想定外に長引いてしまい、戻ってきたときは全盛期とは程遠い選手になってしまっていた。2018-2019シーズンにはローズとデイビスがポジションを争っていたけど、本来のローズはデイビスの比じゃないような選手だった。デイビスごめん。

 プレーがうまくいかないストレスもあってか、ピッチ上よりピッチ外での言動の目立つ選手になってしまった。移籍の話も結局決まらずパフォーマンスも上がらない。モウリーニョがやってきてからはいよいよ使われなくなり、今シーズンは出場なしどころか、選手登録すらされなかった。こんな屈辱なシーズンはないだろう。

 契約に縛られ、飼い殺され、アカデミーの練習場に追いやられるような選手じゃなかったはずだ。少なくともローズの貢献を考えるとそんな扱いはしたくなかった。在籍14年は今の選手の中では最も長い。

 メイソンが暫定監督の座についてからはトップチームの練習に戻ったという報道もあったけど、たまに写真を見るにだいぶ太ってしまったようで、このままでは次のクラブを見つけるのは簡単じゃない。まだローズは30歳一つ上のベイルもコンディションに難のある選手だったが、きっちり管理して努力をすればまた戦えるようになるんだという姿を見せてくれた。ローズもそうあって欲しい。

 と、願望はあるものの、最後にローズがプレーしていた時のパフォーマンスに戻ったくらいではプレミアのクラブでは難しい。将来性で獲得されるような年齢ではないから、今この瞬間の実力のみが履歴書になる。イングランドの選手のあまり国外に出たがらない傾向を考えると、現実的なのはチャンピオンシップかもしれないね。本人はどういう希望を持っているのだろうか。

 ウォーカーがシティに移籍してからというもの、トリッピアーやオーリエはずっとウォーカーの影に苦しめられてきた。ローズは去り際こそぐずぐずしてしまったけれど、過去15年ほどで最高の左サイドバックはダニー・ローズだったとしばらく言い続ける自信がある。おいレギロンとデイビスはそうならないように頑張ってくれよ。

 この先もプレーし続けるのかはわからないけど、そうなればずっと応援していきたい。ローズはスパーズの歴史に残る選手だった。それは忘れないからな。

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