2023年3月26日、トッテナム・ホットスパーはアントニオ・コンテ監督の解任を発表いたしました。
また、振り出しに戻る
どう考えても時間の問題だったコンテの解任自体には、さほど驚きの気持ちはない。もうしばらく前から今シーズン限りで切れてしまう契約に関する質問をはぐらかし、シーズン終了時点での監督交代は既定路線だった。それまでは頑張るのかなと思いきや、サウサンプトン戦後の記者会見で不満を公にしてしまい、選手やフロントからの反感を買って少し早まったというだけだから。
あんなに赤裸々に文句を口にしてしまえば、こうなることは避けられなかったのかもしれないが、言っている内容は決して的外れなものではなかったと思っている。
「監督を変えるべきだと思うのならそうすればいい、ただし状況が変わることはない」
そう言い切ったコンテの言葉が正しいかどうかは数年後にわかるだろう。今はそれを強く否定する材料は持ち合わせていない。
アントニオ・コンテという監督を招聘したということは、タイトルを狙うということであり、クラブもそのつもりではいたはずだ。しかし結果はそれには遠いもので、さらに試合内容も厳しいものだった。不用意な失点は止まらず、攻撃も困ったら放り込みに頼るばかり。ずっとそんな不満に目が眩んではいたが、コンテの残した成績はスパーズの監督史上、ポチェッティーノに僅差で敗れる2番目だったそうな。僕らが単に高望みをしていただけなのだろうか。
もっともっと目に見える変化を望んではいた。だからこそズレが埋まらないまま来てしまったが、コンテが来る前に比べると今は確実に良くなっている。ヌーノ・サントの終盤はリーグで最も走らないチームだったし、モウリーニョの頃からずっと、ロクなビルドアップもできないままだった。まあビルドアップには未だに課題があるとはいえ、あの頃よりはマシになっている。これがコンテではなくて、数年先を見越した監督人事だったら待てた可能性はある。
ただ今のスパーズの状況はアルテタが我慢したアーセナルとは違う。間もなく30歳を迎えるケインのためにも、時間をかける余裕がないのだ。今すぐにタイトルが欲しい。少なくともそれを狙う野心を示さないといけない。本当はそんな土台ができているわけでもないのに・・・そんなアンバランスな状態にあるとようやく気付かされてしまった。
次の監督に関する噂話は連日報道されているが、とりあえずはステッリーニを暫定監督とするようだ。コンテを解任してコンテの右腕を残すことになって大きな変化が起こせるのかは疑問だが、選手の精神的な圧迫感を解放してあげられるだけでも違うのかもしれない。そんなものはいわゆる解任ブーストを数試合産むだけのものだと思うが。
モウリーニョ、コンテと来た時は、こんなビッグネームを呼べるようになったのかと感動したし、レヴィの本気度が垣間見えて嬉しくもなったけど、タイトルに向けた挑戦は失敗に終わってしまった。この2人でも無理ならきっと今すぐには無理なのだろう。モウリーニョがデレ・アリに呈した苦言が事実になっているように、コンテがスパーズに向けた苦言も事実なのかもしれないと思うよ。
ケインには悪いけど、スパーズの黄金期はここで一度終わる。もう終わっていたのかもしれないが、明確に認める時が来たようだ。また次なるサイクルに向けてチームを作っていかないといけない。そのための監督を選び、フロントも選手もサポーターも耐え忍びながら次の春を待とう。そしていつの日かCLの舞台で再会するであろう、モウリーニョとコンテを倒そうぜ。