モウラは最後までモウラだった

ちょっと書くの遅くなりました。
契約満了で退団した、ルーカス・モウラについて

ONE MATCH WONDER

 今のモウラは30歳だ。選手として最も旬な時期をスパーズに捧げてくれたモウラにとっての5年半はどのように感じられているのだろうか。

 パリ・サンジェルマンからやってきた小柄なドリブラーはあの当時抜群の連携で攻撃を司っていたケイン、ソン、アリ、エリクセンの中に割っていく異色の存在感があった。ボールを持てばキレキレのドリブルで相手DFに突っ込んでいく、当初はドリブルばかりで周りを使えないスタイルも、加入したばかりだからしょうがないと受け止められてはいたが、結局最後までそこは変わらなかった。いつまでも新入りのようなプレースタイルだった。

 誰かが怪我をしたり移籍をしたりした時はスタメンを張る時期はあったが、いずれも定着し、絶対的な存在になることは出来なかった。それでも全公式戦で219試合に出場し、38得点27アシストは立派な数字だと思う。この出場試合のうちほとんどはフル出場ではなかっただろうし。

 ルーカス・モウラを語る上で欠かせないのはチャンピオンズリーグの準決勝、アヤックスとの2ndレグでしょう。あの試合だけでもモウラを獲得した価値があったと言える。今シーズン見せた途中交代での退場や決勝点を献上するミスなんかはすぐに忘れ去られるような些細なものだけど、あの試合のことは一生忘れることはない。もう4年も前のことなのに今だって鮮明に思い出せる。

 最終年となった今期はモウラにとって一番難しかったに違いない。そもそも怪我で大部分を欠場し、終盤に戻ってきたらミスを連発して追い詰められていたのは想像に難くない。はっきり言って戦力ではなかった。惜しまれることなく退団する勢いだった。

 しかしそこは「記録より、記憶に残る男」のさすがなところ。最終戦で5分だけ出番を与えられると、これぞルーカス・モウラだと言わんばかりの惜別のゴールでチームに別れを告げた。もしかしてスパーズでのラストタッチがあのシュートになったのかもしれない。

 パスが出来ないとかプレスが甘いとか僕も散々言ってはいたけど、ブラジル人にしては寡黙で謙虚で真面目な人柄はどうしても愛さずにはいられないものだった。まだまだ高いレベルでプレーできる選手だと思うので、自分に合ったチームを見つけられるといいね。ありがとう、ルーカス。

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