コンフォートゾーンを飛び出せ

 本来は開幕前に書くはずのシーズンの展望記事を途中のまま放置していました。半分はシーズンについてのお話しを、半分は5試合を終えて提言をお届けします。

目標はいつだって昨年の自分

 昨年の展望記事にも使用した評価の定義をしてみましょう。中身を少し改良しています。

評定S:いずれかのタイトルを獲得 or チャンピオンズリーグ出場権獲得
評定A:EL or ECL出場権獲得
評定B:トップ10フィニッシュ
評定C:勝点42以上獲得
評定F:チャンピオンシップ降格

 評定A以下の内容を変更しました。去年の評定Aは「ヨーロッパリーグ出場権獲得」、評定Bは「カンファレンスリーグ出場権獲得」、評定Cは「トップ10フィニッシュ」、評定Fは「ボトム10フィニッシュ」でした。見事に昨年は評定F、あたりまえです。

 そうです。目標を下方修正しています。これは謙虚でいましょうという話ではありません。謙虚というのは、「実績があり自信もあるけどそれに驕ることのない心の様」を言います。結果が出ていない現状を正しく認識せずに楽観した目標を設定するのは愚か者です。高い目標を持つことが大事なんだという意見もあります。もちろん長い目で見た時の目標はプレミアリーグ優勝であり、チャンピオンズリーグ優勝です。でも今年の目標を考えた時に現実的とは言えないものを設定してしまうと、先の先の目標まで遠ざけることになると思っています。わかりやすくなるかわからない例えをしてみると、Googleに入社したいと目標を立てたあなたがまずやることは面接を受けることですかという話。面接でアピールできるような実績を作ったり、そもそも面接で喋れるように英語を勉強するべきじゃないんですかと。小手先の面接テクニックで受かるようなレベルにないでしょうよと。やっぱり例える必要はなかった。

 昨年書いたときはヨーロッパリーグ優勝かつ17位フィニッシュの後だったので最低でもトップ10フィニッシュだよねと思っていた。しかし結果は2年連続17位、シーズン中に監督2回交代の後でトップ10が当たり前みたいなことをいうのは正しく現状認識できているとは思えません。そうした傲慢さが昨年のチームの問題だった。上手くいっていない中でもまあ自分は悪くないしなという振る舞いになるのは自分たちが挑戦者であるということを忘れている証拠です。チャンピオンズリーグの常連だった時代はすぎてしまった。再びそうした争いに加われるように一から築いていくんだという覚悟がいる。

 過去のことはさておき、今夏のフロントは仕事をした。スパーズにとって史上最大の補強を敢行、それもフロント主導ではなく監督の望む選手を集めるために力を尽くした。ここからはデゼルビと選手たちに託される。早くも色は見え始めているが、今のところ結果は伴っていない。まあ何度も言っていることだけど、サッカーにおける基本的な連携プレーみたいなものがほとんど存在していないスパーズにボールを持って主体的にプレーするスタイルを植え付けようとしているんだからこれは大工事ですよ。一朝一夕で出来る事じゃない。良くなったり悪くなったりしながら不安定ながらなんとか形作っていくようなシーズンになります。そのためにも、チャンピオンズリーグ出場権を取るみたいな高すぎる目標を掲げるのは危うい。もし目標は4位以上なら、3連敗でもしたら監督交代とかいう話をしなきゃいけなくなるから。なので一番下の合格ラインを勝点42としました。昨年の自分たちを超えていることをまずは目指そう。

 かの有名なエイブラハム・リンカーンはこう言っています。

「あなたが転んでしまったことに関心はない。そこから立ち上がることに関心があるのだ」と。

 今年のスパーズに捧げる言葉はこれです。見るべきは立ち直り方です。本当はこの記事は開幕前に公開する予定で、その時は『これまでのように序盤は結果が出るかもしれない。そしてきっとまた対策される時期が来る。その時が本当の勝負だ』という旨のことを書くつもりでした。ところがどっこい最初から躓いてしまうとは。5節を終えて未勝利の最下位だとは。

 どちらにしても同じことです。遅かれ早かれ上手くいかない時期は来る。代表ウィーク明けには勝てるようになるかもしれないけれど、きっと長くは続きません。そうした時に踏ん張って、逃げずに乗り越えなければならない。ポステコグルーとフランクの時にどちらも最初だけ良くてその後に失速し、そこから立て直すことができなかった。いや、もっというとモウリーニョやコンテの時もそうだった。フロントもサポーターも苦しい時期を我慢して支え、選手がそれに応えられるのか、それを見ていくシーズンにしたい。まあ2年も我慢しているサポーターにこれ以上を求めるのは酷だと思うものの、ホームの戦績の悪さにホーム戦で流れる6万人の不安そうな空気感が影響していないとは言えないのでね。地に足つけて、毎試合課題と向き合って地道に改善していくほかはない。本当は強いのに微妙に噛み合っていない強豪チームではないんだと自覚して歯を食いしばって立て直そう。

ボランチの組み合わせを見直したい

 ここからは提言パートです。少しでも勝利に近づけるために、こんなことをするのはいかがでしょうかという考えを述べてみます。賛否両論あるでしょう。こいつ見る目ねえなと切り捨てるのは最後まで話を聞いてからにしていただけますでしょうか。ご意見は一つだけ。ボランチの組み合わせを見直したい。もっと具体性を持って踏み込みます。ベンタンクールを外してみよう。

 攻撃が上手くいっていないことの理由にボランチの攻撃参加の少なさを度々指摘してきました。最近多いのはトナーリとベンタンクールのダブルボランチですが、この2人が組むとどうにも後ろに重くなる。なんか去年も同じ時期にパリーニャとベンタンクールだと重いとか言っていたのが甦ってきた。あれとほとんど一緒です。あまりにも後ろからの飛び出しがなく、それが全体の硬直化の一因だと思うのです。だからどっちかを入れ替えたい。代役はフェルナンデスがいい。新加入の2人で改革していこうじゃないか。

 他のチームの試合を見ていても、ここまでダブルボランチが攻撃に出て行かずに上手くいっているチームが見当たらないのよ。先週の日本代表の試合で終盤に3-1-4-2という超攻撃的な布陣を敷いていた時間があったけど、あの時にワンボランチを任された時の鎌田でさえここぞという時にはポジションを捨ててウイングのような位置まで上がったりしていた。対してベンタンクールはウルグアイ代表ではもっと顕著に守備的で、センターバックの間に下がってビルドアップに貢献してはいたものの、攻め上がりはなかった。ウルグアイ代表もまた、全体的に流動性は少なくて硬いチームだった。

 個人のパフォーマンスだけ見れば素晴らしいプレーの数々だということはもちろんわかっている。気の利いたポジショニングで何度相手の攻撃の目を摘んでくれたかわからない。でも今はもうちょっと、攻撃のためにバランスを崩してみてもいいはずだ。思うに、ベンタンクールは強者のチームのアンカーだと思うんですよ。例えばレアル・マドリーのように、前線の連中にお任せしていれば攻撃を完結させられる質を持ったチームの掃除屋として、後方で暗躍しているのが合っているタイプなのです。今のスパーズで攻撃は他の人たちでよろしくという選手が中盤にいると、必要な時に人数が足りなくなってしまう。じゃあトナーリを外せばいいという声も聞こえてきます。まあ正直どちらでも良いです。ただ感覚値としてまだトナーリの方が前に出ていきそうな雰囲気はある。常に攻撃役にさせられるよりは相棒の動きをみながら自分が攻撃役にも守備役にもなれる状況の方がトナーリは生きると思う。そうなると後方専門のベンタンクールより、前にも出ていけるし後ろからの配給もできるタイプと組ませてボランチ2人ともを攻守に走らせたい。片方をトナーリとベンタンクールで争ってもらい、もう一方をフェルナンデスとベリヴァルにしたい。誰が出ても上手く行かない状況になったらギャラガーに走ってもらいましょう。話は逸れるけど、ギャラガーって不憫な選手だよね。チームが順調に航海している時は技術的な物足りなさを感じてしまうのに、船底が穴だらけでどうにもならない時には最高の選手に見えるなんて。ギャラガーのようなタイプを必要としないチーム状況になるのが一番だけど、ダメな時に救ってくれる選手だからベンチで腐ってほしくはない。いや違うか、ギャラガーもチームも好調なのが一番いい、だね。話を戻します。

 とにかく中盤から前線に飛び出していく選手がいない現状をなんとかしたい。忘れそうになっていたのでタイトルを回収すると、コンフォートゾーンとは「その人が安心して過ごせる心理的な領域」のことです。この2年ほど一貫して伝えているテーマに沿った良い言葉を知ったので使ってみたくなっていました。ボランチに限りませんが、自分が得意なプレーだけをする選手だけがいるチームは強くなりえません。チームが勝つために必要なプレーをしてくれ。勝てなくなってミスを恐れてしまうと、どうしても自分のやりやすいエリアだけでプレーしてしまう。でもそんな心の中にある壁を壊して飛び出してきてくれ。

 そもそも数年前までのベンタンクールは守備でのプレーだけでなく前にも出ていくスタイルだったはずなのにどうして閉じこもるようになってしまったのだろうか。ただもう簡単には変わらないだろうから、ベンタンクールに変化を求めるよりも、まずは他の選手たちでチームにいい流れを作りたい。そして攻撃のバリエーションが出来てみんなが自信を持って得点を奪えるようになってくればその時にまた、バランスを取ってくれるベンタンクールが必要になる時が来る。彼の良し悪しというよりはチームとして今は必要とするフェーズではないんじゃないかという視点です。良い選手だと思っていますよ。そんなに石を投げないでください。好きな選手ではあるんですって。

 直近のための案としてはベンタンクールを外し、トナーリとフェルナンデスorベリヴァルの組み合わせで攻守両方に走る役割をボランチに求めていきたいという話ですが、一貫して言い続けたいのはチームのために必要なプレーを選択し、実行する献身性を全員が持つべきだという話です。一言で言うとそれが「コンフォートゾーンを飛びだせ」です。なんか1年くらい同じ話しかしていない気がしてきたんですが、このブログ読んでて面白いですかね。まあ長年やっていれば新しく言いたいことなんて減ってくるもんか。このサイトを開設した時にいた選手ってもはやデイビスだけだものね。

 今日のところはこのくらいで許してあげましょう。3週間も試合が空いてストレスなくて良いかと思っていたのに、次の試合が待ち遠しくなっている人はもう頭がおかしいので自覚してください。仲間です。今のスパーズの現状を笑っている人たちを見返してやる時間が来ると思うと楽しみで仕方ない。なあ、みんな。そうだろ。

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