[PL]第11節 トッテナム・ホットスパー vs チェルシー

2023-2024 プレミアリーグ 第11節

Tottenham Hotspur 1 – 4 Chelsea 

Stadium:トッテナム・ホットスパー・スタジアム
通算戦歴:76勝29敗10分(勝率:66%)  

得点
 6分:デヤン・クルゼフスキ(Spurs)
35分:コール・パルマー(Blues)
75分:ニコラス・ジャクソン(Blues)
90+4分:ニコラス・ジャクソン(Blues)
90+7分:ニコラス・ジャクソン(Blues)

トッテナム・ホットスパー
FW ジョンソン(34’ダイアー)、ソン、クルゼフスキ(61’ベンタンクール)
MF マディソン(45’ホイビュア)、ビスマ、サール(61’スキップ)
DF ウドギ、ファンデフェン(45’エメルソン)、ロメロ、ポロ
GK ヴィカーリオ
sub:フォースター、ロチェルソ、ヒル、リシャルリソン

チェルシー
FW ジャクソン
MF スターリング(90’ウゴチュク)、フェルナンデス(57’ムドリク)、ギャラガー、カイセド、パルマー
DF コルウィル(46’ククレジャ)、シウバ、ディサシ、ジェームズ(77’ギュスト)
GK サンチェス
sub:ペトロビッチ、バディアシル、マドゥエケ、マーステン、ワシントン

なぜ感情を抑えることができないのだ

 楽しみな話題ばかりのはずだった。かつてのボスであるマウリシオ・ポチェッティーノがライバルチームの監督として、退任以降初めてスパーズのホームスタジアムにやってくる。あなたがいなくなってから散々苦労したけど、今やっと我々は進むべき道が見えてきたのだと、真正面からチェルシーを打ち破ることで見せてやるつもりだった。そして把握しているだけでも、デフォー、ベイル、サンドロといったかつての仲間もスタジアムには駆けつけてくれている。今節アーセナルに黒星がついたことで、プレミアリーグ唯一の無敗クラブとして、シティの上に立ち続けるはずだった。実際、試合は最高の立ち上がりを見せ、開始6分でリードを奪い、快調に試合を進めていた。順調なはずだった、ロメロが一発レッドで試合を壊すまでは。

 一応ファンなりに擁護を試みてみる。エンソに足裏のタックルを見舞ってしまった場面はこれまでプレミアを見てきた基準で言えば、文句のないレッドカードだったと思っている。判定に異論はない。ただロメロとしても無鉄砲に突進したわけじゃなく、ボールに行ったが正確にミートできず、その残り足がエンソに入ってしまった形だった。ペナルティエリア内での素早い反応が出来ていたからこそのファールだった。そう思うこともできなくはない。

 でもね、今日のロメロの退場を、しょうがなかったと片付けるのは難しい。冷静にあの場面を見れば、不運なプレーだとも言えるが、本当はその前にロメロは退場しているはずだった。ボールに関係ないところで、コルウィルを後ろから蹴飛ばしたときに。

 熱くなってくれるのは構わない。僕たちはそう言うプレーが好きでプレミアリーグを見ている。ただ情熱や闘争心と、怒りや不満からくる感情は切り分けてコントロールしなければならない。ロメロはまだ25歳だが、若いからと許すわけにもいかない。並びのディフェンス陣はみんな年下であり、君はチームの副キャプテンなのだ。センターバックとしての能力がいかに高く、どれだけロメロのプレーで救われた場面があっても、半年に1度は試合を壊すプレーをされるなら普段のプレーにどれだけ価値を見出せるだろうか。

 たらればには意味がないが、11人であればここまで守備に追われる展開になることはなかったはず。だとすれば、ファンデフェンに過剰な負荷がかかることも、ウドギが2vs3の守備で2枚目のカードをもらうこともなかったかもしれない。前線の枚数を減らしたことで、肩に力の入ったマディソンが無理なプレーをすることもなかったかもしれないと、考えないのは難しい。

 2人の退場と2人の負傷を受け、チームは絶望的な状況だった。11人vs9人と言うだけでなく、今期初出場のダイアーとボランチのホイビュアがセンターバックをやっているのだ。リヴァプールはこの状況になった時に、前線の選手を全て下げて守り切るというリアリズムを選択した。うちもそうするだろうと思ったのに、ポステコグルーは引かなかった。相手がボールを持っているのにもかかわらず、最終ラインをハーフウェーラインに設定するという異次元のハイラインで迎え撃つという奇策に出た。あわよくばこちらも点を取ろうとするのなら、引いてしまっては可能性はなくなる。この勇気ある決断はサポーターの心に火を付けた。選手の目は死んでいなかった。

 正直かなり抵抗できていたと思う。チェルシーはスパーズというよりもオフサイドラインとの戦いを強いられ苦戦していた。たまに破ったと思っても、3人目のセンターバックと化したヴィカーリオが猛然と飛び出してきてはピンチの芽を摘んでいた。そういえば今日もヴィカーリオのセービングは凄まじかったね。並のキーパーなら最終スコアが2桁でもおかしくなかったと言えるくらい。後方の選手のうち、残ったのがポロとヴィカーリオだったことも、最後まで抵抗できた要因だったと思う。彼らの味方を鼓舞するムードメイキング力は確実に良い影響を与えていた。これは今日に限った話じゃないけど。

 この展開でリードを許せば、追いつける希望なんて持てるはずもないのに、75分の失点もスパーズチームの心を折ることはなかった。最終スコアは1-4だが、アディショナルタイムにソンが迎えたビッグチャンスを決めていれば、引き分けの可能性も十分にあった。あのソンの決定機も、超ハイラインを引いていた狙いの一つだ。この人数差でチャンスを作るのなら、パス一発に賭けるしかない。そのためには、最前線のソンまでの距離を空けるわけにはいかなかった。

 9人になったのにも関わらず、今シーズンの主力の大部分を欠いたにも関わらず、勇敢に戦い抜いた選手たちに対し、現地のサポーターは声援と拍手で応えていた。本当に心を打つ戦いだった。かつて今日のような自滅とも言える展開で敗れたチームがスタンディングオベーションを受けたことなんてあっただろうか。それだけに、ロメロの軽率なプレーを簡単に許せるほど、心の整理を付けるのは時間がかかりそうだ。ひょっとするとここまでのチーム状況を全て壊すことにもなりかねないものだったから。

 今シーズンの無敗記録、ポステコグルーのホーム無敗記録、あと知られていないけど、ヴィカーリオが1試合に2点までしか取られていないという記録も1年続いていたのに終わってしまった。ロメロは3試合、ウドギは1試合の出場停止になる。さらにファンデフェンは現時点では続報はないが、足も付けずにピッチを去ったことを考えると、2023年中の復帰は厳しいんじゃないだろうか。

 一気に守備陣が脆弱になった。センターバック登録はダイアーと若手のフィリップスしかいない。信条とする攻撃サッカーで、3点取られても4点取って勝つというならそれも面白いが、果たしてどう乗り越えるのだろうか。

 シーズンを通じて全部完璧な試合なんてありえない。起こるべき不幸が全部1試合に来たのだと信じて、次の試合に向かうとしよう。落ち込みすぎるのも良くない。あまりにも負けないから耐性がなくなってきたよ。1試合負けただけと言い聞かせ、これまで出番の少なかった選手たちを信じる。それが今やるべきことだ。

2023-2024シーズン 試合結果一覧

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