突然やってきてしまったデレ・アリとの別れ

2022年1月31日、トッテナム・ホットスパーはデレ・アリの移籍を発表いたしました。

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また、時代を築いた選手がいなくなった

 デレ・アリはもう一度、スパーズで輝く選手になるんだと本当に信じていました。今は難しい時期を過ごしているけど、きっと解決策を見つけるんだと思っていた。だからこの冬の市場ではレンタルで出て行っては戻ってくるはずだった。しかし正式に発表されたエヴァートンへの移籍は、予想していなかった完全移籍だった。

 どうやらスパーズはレンタルを望んでいたけど、1クラブがレンタルで登録できる選手には上限があるというルールがあるらしく、エヴァートンは既に上限いっぱいレンタル移籍を活用しているので、アリが行っても登録できないので完全移籍という形になってしまったようだ。

 アリがスパーズにやってきた時に、その後の活躍を予想できた人なんてほとんどいなかったはずだ。当時フットボールリーグ1(3部相当)のMKドンズから全く知られていない若者がやってきた。当然誰も即戦力としては考えていなくて、レンタルで経験を積ませて数年後にモノになればラッキー、そうでなくても大した痛手でもない。そんなすぐに忘れられるようなよくある投資案件だった。

 しかしシーズンが始まると、開幕戦から出番をもらい、気づけばレギュラーとして欠かせない選手になっていた。2列目にいてスピードもパワーも平凡に見えるのに、巧みな技術と狡猾な動き出しで脅威の得点力で数字を重ね続けていく。ケイン、ソン、エリクセン、アリのカルテットは近年のスパーズの誇りだった。特に同時期に加入したソンと仲良くしていた。

 悪童なイメージもあるにはあるが、どちらかというと冷静な性格で、対峙する相手の動きをよく観察して足を出せない位置にボールを動かすのが得意。おちょくるような意外性のあるプレーも好きでまた抜きや少し浮かせただけのループパスもよく使う。

 また、相手の嫌がることを見つけてはそれをやり続ける選手だ。ビルドアップのキーマンを消すような守備はいつもチームを救っていた。クリエイティブに特化していてハードワークを怠る選手という印象もあるらしいがそれは全くの誤りで、いつだってピッチ上で誰よりも走る選手だった。それは不調と言われている今でも変わっていない。

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 そう、アリが絶対的な選手ではなくなってしまってもう2年ほどが経つ。例のチャンピオンズリーグ決勝の後、ポチェッティーノ政権の歯車が狂ってきたのと同じくして、アリも輝きを失ってしまった。

 課題はプレーの幅かもしれない。スパーズで見せていた最高のデレ・アリは、エリクセンというワールドクラスのパサーがいてのものだった。アリは下り目でチャンスメイクもしつつ、機を見て最前線に飛び込んでいくのが魅力だったのに、ラストパスを出せる選手がいなくなってからはチャンスメイクだけを求められるようになってしまい、そこからは色々と中途半端であることが否めない。

 派手にドリブル突破するタイプでもなく、かといってパサーに特化できるほどでもない。前線に顔を出して行くという選択肢があってこそのプレーの意外性が魅力なのに、今は無難なパスを繋ぐだけの選手になってしまった。もちろん、スパーズの攻撃自体がスピード一辺倒になっていたせいもあるとは思うが。

 エヴァートンへの移籍が決まったことで楽しみにしたいことは、監督に就任するフランク・ランパードととの共演だ。かつて得点を量産していたころ、同じく中盤から点を取れる選手だったジェラードやランパードの後継者だとみなされていたこともある。イングランド人なら誰でも尊敬しているレジェンド監督から学ぶことは多いはず。ぜひ、アリを再生させてほしい。

 あまりにも若くしてその名を轟かせたアリだが、まだ25歳だ。本来ならケインと共にイングランド代表のスーパーエースになっているはずだった。今は壁にぶち当たっているが、きっとここで終わる選手ではない。まだ諦めて欲しくない。

 「あの頃」のスパーズを支えていた選手一人、また一人とチームを去っていく。必要な改革だと分かっていても、やはり寂しいものだなと思う。特にアリはずっとスパーズでやって行くような選手な気がしていたから。

 最後はうまくいかなくなってしまったが、アリの貢献を忘れることはない。アリのプロ人生を考えると、きっとこの移籍は正しい決断だと思う。それを証明するのはこれからの自分自身だ。またリーグ戦で会おう。7年間ありがとうございました。

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