ドハーティの完全移籍は予想外

2023年1月31日、トッテナム・ホットスパーはマット・ドハーティとの契約解除、及びアトレティコ・マドリーへの移籍を発表いたしました。

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クラブもギリギリまで認識していなかったルール

 ペドロ・ポロの獲得が間近に迫っていることもあり、右のウイングバックの人員整理は今冬の課題の一つだった。レンヌへのレンタルが発表されたジェド・スペンスが出ていくことは想像の範囲内だった上で、3人でいくのかもう一人出すのかという話だったはず。ドハーティは両サイドをそれなりのレベルでこなせるので、左右合わせて5人でいくというのもあり得る話だったのに。

 キーラン・トリッピア、セルヒオ・レギロンに続いてトッテナムのサイドバックが大好きらしいアトレティコ・マドリーが、今度はドハーティのレンタルを希望していた。しかしここで問題が発生する。知らないルールだったんだけど、1度にレンタルに出せる選手の上限がFIFAのルールで決まっているらしく、今冬にスペンスとヒルを出したおかげでそれに達してしまったようだ。このルール、詳細を調べていないんだけど、トップチームで活躍していない若手は対象外なのかな?どこまでが含まれているんだろうか。

 去年は1月31日にデレ・アリがエヴァートンに完全移籍になった。あの時はエヴァートン側がレンタル受け入れ数の上限に達していたから完全しかなかった、という話だったが今年は逆側だ。勉強になります。知らないことはまだまだ多い。でもこれ、スパーズの首脳陣もまともに把握していなかったみたいだね。18ヶ月も契約を残すドハーティが出ていくのなら、移籍金を払ってもらうのが筋のはずなのに、レンタルができないからと諦めて契約解除に踏み切るのはその辺のバタバタが伺える。獲得する際の移籍金の交渉はシビアなのに、放出は本当に下手である。

 2020年の8月にやってきたドハーティとの共闘期間はおよそ2年と半年だ。ウルブズにいた時はリーグ最高峰のウイングバックだったのに、トッテナムに来てからは難しい時間が続いていた。慣れない右サイドバックを任されたり監督がコロコロ変わったり、パッとしないまま終わるかと思ったが、コンテが就任しウイングバックもポジションが生まれると、低調なチームを引っ張るような突然の覚醒を見せた。ちょうど去年の今頃だね。あれには感動したよ。

 決して身体能力は高くない、味方を使って頭を使って戦う選手だ。特にウォーカーが脳筋で右サイドを制圧していたもう何年も前から、右サイドを連携で攻略するプレーはスパーズには皆無だった。ドハーティが輝けなかったのも右ウイングに味方を使える選手がいなかったせいもあるかもしれない。だからこそ、クルゼフスキの加入から、ドハーティとのサイド攻撃は見慣れない崩しで新鮮だった。

 ドハーティが最高のプレーを発揮し始めた時になんとも不運にもアストン・ヴィラ戦で大怪我を負い、長期離脱を余儀なくされた。怪我から復帰してもあの時の感覚を取り戻すのには今でも苦労している。今シーズンは平均して不安定なままだ。良いプレーをして戻ってきたかと思えば、存在感の薄い試合もしてしまう。良くも悪くも計算が立つエメルソンの方が比較的試合に出ているのもそういう理由があるだろう。

 実直なドハーティはサポーターからも信頼されている選手だったと思ってる。だからこそ、今回の突然の別れには動揺している。もちろんポロが加入したことによってさらに出番は減るだろうし、左右合わせても20代前半の選手が多いウイングバックのポジション争いではレンタルに出ても戻ってくる場所はないかもしれないという思いもあるだろう。新しい場所で挑戦したいという気持ちは理解してあげたい。ショックではあるけれど、次なる成功を願っていたい。トリッピアのようにアトレティコで信頼されてまた評価を上げる道があるのだから。

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