[PL]第35節 アストン・ヴィラ vs トッテナム・ホットスパー

2025-2026 プレミアリーグ 第35節

Aston Villa 1 – 2 Tottenham Hotspur 

Stadium:ヴィラ・パーク    

得点
12分:コナー・ギャラガー(Spurs)
25分:リシャルリソン(Spurs)
96分:エミリアーノ・ブエンディア(Villans)

トッテナム・ホットスパー
FW テル(92’ベリヴァル)、リシャルリソン(92’サール)、コロムアニ(67’スペンス)
MF ベンタンクール(67’ビスマ)、ギャラガー、パリーニャ
DF ウドギ、ファンデフェン、ダンソ、ポロ
GK キンスキー
sub:オースティン、ドラグシン、ソウザ、グレイ、マディソン

アストン・ヴィラ
FW エイブラハム(60’ワトキンス)
MF ロジャース、ティーレマンス、バークリー(85’ブエンディア)、ボガート、サンチョ(85’ベイリー)
DF マートセン、ミングス、リンデロフ、キャッシュ
GK マルティネス
sub:ビゾット、コンサ、ディニュ、トーレス、ガルシア、ルイス

ベストゲームオブザイヤー

 2026年のトッテナム・ホットスパーについて、これまでほとんど文句しか言ってこなかったという自覚がある。気持ちが足りないとか傲慢であるとか色々言ってきたけれど、選手たちも計り知れないほどのプレッシャーと闘っていたのだなということがよくわかった。1つ前のウルブズ戦も勝ちはしたけど出来は悪かった。しかし今日は全く違った。1勝がここまでチームを変えるとは。選手たちの心を解き放つとは。

 「残り試合は全て決勝戦のつもりで戦う」と言っていた。そういえば過去10年くらいで何度か本当の決勝戦を戦うのを見たけれど、プレー内容が良かった決勝戦の記憶ってないなとふと思った。勝ったのは昨年のヨーロッパリーグだけだったが、あの試合も渋い試合をしての辛勝だったからね。余談でした。

 さてそんな「決勝戦のつもり」に相応しい完璧な戦いを満身創痍の戦士たちは実行した。特に前半は非の打ちどころがないものだった。ヴィラはヨーロッパリーグの準決勝の最中なので、明らかなターンオーバーで臨んできたが、スパーズだってメンバーの入れ替え度合いは変わらないと思っている。全員揃っていたらたぶん前線の4人はみんなベンチだろうから。主力を休ませるために試合を消化させられているヴィラの選手たちと背水の陣の戦いを続けているスパーズの選手たちの熱量の違いがそのままピッチに反映されたようでもあり、その勢いを勢いだけにしない冷静の中にある情熱だったと思う。

 長いこと前からのプレッシングといえば、最前線の選手たちから順にボールを持っている選手をひたすら追いかけていくというものだった。センターバックが持てばセンターバックに、バックパスをされればゴールキーパーまでただ一生懸命に追いかける。ただしどのクラブもスパーズと違いビルドアップの練習をちゃんとしているので、お気持ちだけでボールに迫っても特に相手を困らせることはなくむしろ守備のバランスが崩れてピンチを招くようなものだった。それがどうだろう、今日のスパーズはマルティネスがボールを持った時に、リシャルリソンとギャラガーがそれを睨みつつ、チーム全体で迎撃の準備を整えてじわりじわりと間を詰めてここぞという時にスイッチを入れてヴィラにパニックを起こす見事なハイプレスを仕掛けていた。「自分たちのサッカー」という思考停止ではなく、ちゃんと相手を見て組織的に奪い取る守備だった。

 攻撃のデゼルビという印象のある監督だったが、守備もしっかり仕込んできた。守備を重視していると思っていたフランクやトゥドールの時と何が違うのだろうか。まだ答えに自信はないがおそらくポステコグルーも含む他の監督がコンセプトや精神性で方向性を決めていたのに対し、デゼルビの方が具体的にやり方を決めているのではないかと思う。別にこれまでの監督が悪いというわけではない、サッカーとは準備してきたものだけでなく試合中に自ら判断をしなければならない場面が多いので、原則を植え付けるだけの監督がいることは否定しない。ただし今のスパーズにはそれが出来るだけのチームプレーの基礎がなかったという話なんじゃないだろうか。

 今日のハイプレスの形には再現性があった。前の2人の立ち方や後ろの準備の仕方。どのくらい間を詰めたら一気に寄せていくのかなど同じような場面を作れていた。奪われた後に即時奪回に動く切り替えの速さなんかは1勝がもたらした自信と勇気だと思っているが時間がある時の準備の質の高さは、練習からこうやって相手を追い詰めようという決め事が明確だったからなんだろうと思う。

 それはボールの保持時にも似たようなことが言える。ところで本日のスタメン発表の際、パリーニャとベンタンクールが同時に選出されているのを見て頭を抱えた人は怒らないので手をあげてください。この2人は能力や実績を鑑みると共に先発で起用したくなるのはよくわかる。しかしフランク監督の時期から同時起用はまるでうまくいかなかった。2人とも攻撃時に後ろでアンカー的に振る舞いたがるので、前に出ていく選手がいなくて流動性を阻害する要因になってしまっていた。それが今日は問題にならなかったのはこれもデゼルビが立ち位置の約束事を明確にしてくれたからだ。

 2人の性質は尊重し、代わりにサイドバックを前に押し出す形を作ってきた。ビルドアップの際にパリーニャとベンタンクールのどちらかをサイドバックの位置に下げる代わりに両サイドバックをセンターフォワードとウイングの間くらいの位置まで上げる。これで全体の重心が下がり切らないようなバランスをオートマチックに実現していた。さらに全体的な選手の立ち位置も綺麗に整理されていて、まああんまり難しくなりすぎないように言うと、選手のいる場所が被りすぎたり極端にどこかに人が足りなくなったりしないようにどんな状況ならどこにいるべきという共有もできていたようだった。こうした約束事が存在することで選手が迷いなく動けていたのはデゼルビが言う理想よりも現実路線という効果だ。

 さて、そんな小難しい話はもうしません。やっとチームが一丸となってやっと情熱溢れるプレーが結果に繋がって、もう最高の試合だったよ。最初から最後まで同じペースでボールに喰らいつくギャラガー、球際に命を賭けて吠えるポロとパリーニャ。彼らの情熱に呼応してくれた他の選手たちの中で一際冷静に状況を落ち着かせるベンタンクールとキンスキーの技術がまたいい味を出していた。ちょっと今日のキックの安定感と精度を捨ててまでキンスキーを外すのはやめた方が良いんじゃないかと思いますがどうでしょう。時を止めるように自信たっぷりにボールを持つことで相手は迂闊に間を詰められないでいた。前にもう蹴ってくれとボールを下げられても中長距離のフィードを正確に味方に届けることで相手に流れを持っていかせなかったあたりは派手じゃないけど高く評価されていい部分だ。今日は1失点セーブ0だったと思うが、それはキンスキーがキックの精度でピンチを防いでいたとも言えると思う。勝ってるチームは変えるなという格言を言い訳に、このままセカンドキーパーで行きましょうや。

 いい試合ができた。それが勝利に繋がった。そしてこの3ポイントでウェストハムを抜いて17位に浮上した。これで残留するために誰かに結果を待つ必要は無くなり、再び未来は自分たちの手中に帰ってきたのだ。もう厳しいのではないかと思っていたところから、ついに勢いというものがチームに生まれた。絶対にこれを手放さないようにしよう。決勝戦はまだ後3つある。

2025-2026シーズン 試合結果一覧

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