トッテナムの今シーズンを考える

 順位予想はこの前しましたが、スパーズに特化した展望とか目標とかそういう話をしていなかったので、移籍市場が閉まりシーズンが本格的に始まって行こうというこのタイミングで書いてみます。あと数時間で駆け込みの移籍はあるでしょうか。

この方法が勝つための最善策なんだ

 5月に東洋館出版社から発売された「アンジェ・ポステコグルー 変革者」という本を開幕前ギリギリに読み終わりました。本を読み慣れているわけではないということもありますが、個人的にはやや読みにくい本でした。作者がポステコグルーのこれまで関わってきた関係者にインタビューをしながら過去を読み解く、みたいな構成なんですけど、たまに誰が喋っている内容なのかわからなくなったりする。作者の感想なのかインタビューの回答者なのかポステコグルーの言葉なのか。というわけで、超おすすめだよっていう感じでもないんですが、面白い部分はあったのでそこをまずは共有したい。

 ざっくりとポステコグルーのキャリアをまとめると、
 ・本人はギリシャ生まれ、幼少期に移民としてオーストラリアへ移住する
 ・オーストラリアのギリシャ系クラブで選手としてデビュー
 ・引退してからは選手時代のクラブで監督になる
 ・しばらく色々あったが国内のクラブで結果を出す
 ・オーストラリア代表の監督としてW杯予選を勝ち抜いたところで辞任
 ・横浜F・マリノスの監督に就任
 ・マリノス2年目でJリーグを制覇し、翌年に退任
 ・セルティックの監督に就任
 ・タイトルを取りまくってトッテナムに引き抜かれる

 こうした経歴の流れはちょっと調べれば出てくるし、マリノス以降の部分については放っておいても入ってきてた情報だね。じゃあ何が本を読んでみて面白かったのか。このスパーズ以前のキャリアについてが本には詳しく書いてあるんだけど、

 これまさに、今の状況と同じだ

って思えるエピソードがめちゃくちゃ多い。ポステコグルーは指揮をするチームを変える度に、同じような障害にぶつかり同じように乗り越えてきている。どこに行っても自身のスタイルを否定され、それも無視して貫いて結果を出して去っている。中身の微調整はあるだろうけど、スパーズの試合を見ている我々がイメージする攻撃的なフットボールという信条は、30年前にオーストラリアの国内クラブで最初に監督になった頃から何も変わっていない。

 マリノスの監督になった時もまずはチーム内で大きな反発があったという。当時のマリノスは守備からのカウンターのチームであり、守備を無視するようなポステコグルーのスタイルを受け入れられない選手が多かった。理想はわかるが現実的じゃない。所詮この監督はオーストラリア国内でしか結果を出したことのない無名の監督だ、と。

 その後の実績は言わずもがな、そしてこれはセルティックでも同じだった。ブレンダン・ロジャースの影を追い、次期監督に期待を寄せていたセルティックのサポーターはプレミアで実績を残していたエディー・ハウとの合意の報道に心躍らせていた。しかしハウはニューカッスルに取られ、やってきたのは見知らぬオーストラリア人。ポステコグルーはここでも言われる。所詮この監督はサッカーの栄えていないアジアで少し結果を出しただけの無名の監督で、ここヨーロッパでは通用するはずもない。その後の実績は言わずもがな。

 そして昨年、スパーズの監督に就任した時も全く同じことが起こった。モウリーニョ、コンテという華のある監督の次に来たのは・・・誰だこれは。

 セルティックでの実績さえもほとんど評価の対象にはなっていなかった。スコットランドは2強のリーグであり、誰が監督をやっていようがセルティックかレンジャーズが優勝する。オーストラリア人が欧州5大リーグで監督をやったなんてことは聞いたこともないし、この新指揮官自身もそうだ。これまではレベルの低い日本やスコットランドではなんとかなっても、ここは天下のプレミアリーグだ、通用するわけがない、、と。

 どこに行っても最初は同じように懐疑的な視線を向けられ、守備を鑑みないようなプレースタイルを批判され、そして最後はタイトルを勝ち取ってきたのがアンジェ・ポステコグルーという監督のこれまでだった。

 他にも共通している事柄がある。サポーターだけでなく、選手の中にもポステコグルーのやり方を信じられない者はいる。本の中の言い方を借りるなら、今までの常識や自分の成功例を忘れられないベテラン選手などがその例にあたる。自分が就任する前からいたそうした選手たちは、いかに実績があろうと人気があろうと影響力が高かろうと関係なく放出し、チームを作り替えてきている。今夏、スパーズは4人を獲得した裏で10人以上の選手を放出している。ここもまた、今までのやり方通りだ。

 

 「面白いからとか楽しいからというだけで、このサッカーをやっているわけではない。このサッカーが一番勝つ確率が高いからやっている」

 これは本の中で実況の下田さんが書いていたポステコグルーのインタビューのコメントだ。ポステコグルーと共に戦っていくのなら、覚悟しないといけないことがある。

 ・カウンターのリスクを考えるべき
 ・セットプレーの守備を改善してほしい
 ・相手によって柔軟に戦い方を変えていこう

 この辺りは去年も散々言われていたし、これからも続くと思う。でも考えるだけ、ストレスに感じるだけ無駄なのだと思う。きっとポステコグルーは意に介さないだろうから。良くなっている部分を見つけて前向きになるしかない。積極性を含んだミスは許容していく強さを持たなければいけない。

 さてこの記事の主題を忘れてた。今シーズンの展望だった。まあはっきり言って、ワカラナイ、ね。ここまで書いてきた通り、ポステコグルーの今までの成功と今のスパーズは共通点が多い。リーグのレベルが上がっていくことは特に関係がなかった。だからと言って今年はタイトルが取れると楽観する気持ちにはなれない。でもそれと同じくらい、上手くいくんじゃないかという気もしている。

 でもね、思うんですよ。上手く行っていない部分を取り上げて、失敗の予想をすることは簡単なこと。ほらやっぱりダメだったっていうけれど、そりゃタイトルを取れるチームは1つしかないんだから残りのチームは敗者になる。ただもしポステコグルーが正しくて何かを勝ち取れるシーズンになるのなら、最初から信じていたんだという方が気持ち良くはないですか。サポーターとして誇らしくはないですか。このままじゃダメだと豪語したのに、タイトルに近づくチームを見て複雑な気持ちになりたくないじゃないですか。

 というわけなので、今年はどこかのコンペティションで優勝すると予想します。少なくともそう信じ続けると宣言します。ここまで信念が明確な監督もそういないのだから、思い切って信仰しきってしまうのもいいと思うんですよね。よかったら皆さんもお付き合いください。いろんなメディアで有識者の方々が、今年のスパーズは厳しい、どこかで現実との折り合いをつけないと、という趣旨の発言をされていますが、そんな常識人の鼻を明かせたら痛快じゃないですか。そんな布教の記事になってしまいました。おわります。COYS

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