2023年1月10日、ギャレス・ベイルが現役引退を発表いたしました。
世界最高の選手にもなりうる才能だった
ベイルを最初に知ったのはおそらく2008年ごろだった。その頃はまだ左サイドバックの控え選手であり、数多くいる期待の若手の1人に過ぎなかった。当時の先発は奇抜な髪型をしたベノワ・アス=エコト、後ろからのフィードが攻撃の起点になることも多い選手で、そのパスセンスにビルドアップを任せていたため走力で違いを作るタイプのベイルと違い、なかなか外すことはできないでいた。
しかしハリー・レドナップ監督によって少しずつ出番をもらうようになると、主に攻撃面で活躍を見せる。それでもアス=エコトを脅かすことは出来なかったが、左サイドハーフとしてプレーするようになったことが、ベイルの転機だったとも言える。
有名な CLインテル戦でのハットトリックあたりから、トッテナムはベイルFCと言っても過言ではないくらい、徐々に依存度を高めていく。移籍前の最後のシーズンはトップ下とも言えないような自由を与えられ、異次元のプレーを連発していた。どんなに試合内容が悪くても終了間際に一人で持ち込んでは理不尽なミドルシュートで試合を決めてしまう。相手チームにとってはどう戦ったら良いのか分からなかっただろう。個人で試合を決めてしまうインパクトはハリー・ケインですらベイルには及ばない。史上最高額でレアル・マドリーが引き抜いたのは正当な評価だったよ。
2020-2021シーズンに1年レンタルで戻ってきた時もベイルは輝いていた。トッテナムのサポーターでベイルに悪い感情を持っている人は多くないはずだ。だからこそ、レアルであれやこれや言われているのが悲しかった。
あまりにも怪我に泣かされ続けてしまったキャリアだった。メッシやロナウドを見ていても、体の強さ、怪我をしないように戦っていく上手さを磨くことが、長く活躍していく第一条件なんだなとベイルを見ていると学ばされる。ロナウドは37歳、メッシは35歳に対してベイルはまだ33歳なのに。
年齢を考えればもちろん早い引退だけど、今回の発表に驚きはなかった。誰がどう見てもベイルはカタールW杯が最後の目標であり、愛するウェールズ代表の一員としてその舞台に立つことだけが唯一のモチベーションであるように見えていたから。もう体も限界なようで、思ったような活躍はできなかったけど、きっともう悔いはないのだろう。そんな清々しさを感じられる引退発表だった。
瞬間最大風速で言えば、メッシにもロナウドにもエムバペにも引けを取らない本当にとんでもない選手だった。たとえ昔のように全力で走ることは出来なくても、ボールに触れればいつだって、何かを起こしてくれる期待感を残していた。もうここ数年は継続して活躍することもなかったから、多くの人には昔の選手であり問題児でしかないのかもしれないが、僕らスパーズサポーターにとってベイルの存在は今でも大きいものであり続ける。きっとまた、何がらしらのニュースでベイルの今後を知ることはできるでしょう。楽しそうであればそれでいい。君はもう十分に戦った。