2023-2024 プレミアリーグ 第1節
Brentford 2 – 2 Tottenham Hotspur
Stadium:ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
得点
11分:クリスティアン・ロメロ(Spurs)
27分:ブライアン・エンベウモ(Bees)
36分:ヨアネ・ウィサ(Bees)
45+4分:エメルソン・ロイヤル(Spurs)
トッテナム・ホットスパー
FW ソン(75’ペリシッチ)、リシャルリソン、クルゼフスキ
MF マディソン、ビスマ、スキップ(75’サール)
DF ウドギ、ファンデフェン、ロメロ(14’サンチェス)、エメルソン
GK ヴィカーリオ
sub:オースティン、デイビス、ポロ、ホイビュア、ロチェルソ、ソロモン
ブレントフォード
FW ウィサ(72’シャーデ)、エンベウモ
MF イェンセン(49’ダムスゴー)、ノアゴーア(72’バプティスト)、ヤネルト
DF ヘンリー、アイェル(84’ヨルゲンセン)、ピノック、コリンズ、ヒッキー(72’ラスムッセン)
GK フレッケン
sub:ストラコシャ、ダシルバ、ヤルモリュク、ルイスポッター
新時代の幕開け
まさに今、スパーズは時代の変わり目にいる。ハリー・ケインがチームを去り、ポステコグルー新監督の元、プレースタイルまでも昨年までとは真逆の方向性をいく。今シーズンの具体的な目標を定めるのは現時点では難しいなと思いつつ、1つでも上の順位を目指すために重要な開幕戦だ。キックオフの前、アウェーのスタジアムの一角を占めているスパーズサポーターの前に移動して組んでくれた円陣には胸が熱くなった。
プレシーズンを経て、ポステコグルーの選んだ11人にはウドギを含んで4人の新加入選手がいる。新センターバックの必要性を考えると大きなサプライズとまではいかないが、加入してまだ数日のファンデフェンもプレミアデビューとなった。
試合の立ち上がりから自分たちの時間を作れているのなんていつぶりだろうか。やり方はプレシーズンから継続で、サイドバックがインサイドハーフに近い位置を取りながら、ウイングもサポートする攻撃的なスタイルは時に2バックと呼べるほど前がかりになる。ハイラインハイプレスもポチェッティーノ初期以来に上手くハマっている。ブレントフォードも巧みに繋いでくるので剥がされた場面もあったが、コンテやメイソンが試した時のハイプレスとは明らかに強度が違った。
新加入で構成した左サイドの二人はどちらも良いパフォーマンスだった。ファンデフェンは前評判通りスピードを生かしたカバーを見せ、ボールの扱いも上手かった。ウドギは身体能力が高いだけでなく、思っていたよりも守備もできていて頼もしさがあった。ちなみにヴィカーリオについてなんだけど、ハイラインの後ろを前に出てカバーする意識が強すぎて、ディフェンスが間に合っているのに出てきているのは気になった。前任が在籍10年のキャプテンだから、自分の力を見せたくなるのは理解するけど、もう少し抑えよう。目立たないキーパーもいいキーパーだよ。
中盤の構成も興味深い。基本はアンカー1枚にインサイドハーフ2枚。インサイドハーフはバランス型と攻撃型で構成したいらしい。前者はスキップとサール、後者はマディソンとロチェルソだ。マディソンは予想通りに良い。とにかくボールを引き出しては自力で前を向いて攻撃の指揮を取ってくれる。いつまで言っているんだって感じだけど、エリクセンの影を見たのは僕だけじゃないはず。
そしてビスマが凄い。プレシーズンの記事でも言ったけど、最も替えが効かなくなるのはビスマだろうと思われる。守備のカバーエリアも広く、何よりボールキープの力が段違いだ。中央後方で少し余裕を持ってボールを持って、プレスをかわしつつ難しい縦パスを刺す能力と姿勢はビスマにしかなかった。
そうなるとスキップのところが物足りない。ソンのサポートをしていたマディソンと比べてしまうと、スキップのところから攻撃が生まれない。誰かをフリーにしたりするためのランニングばかりで、ボールを受けたがっていないように見える。悪かった時のウィンクスと同じだ。常に相手の間に立っていて、パスの選択肢になれていない。別にボールを持ってから3人抜いてくれなんて言わないが、自分なりの貢献の方法を見つけないとすぐにポジションを取られちゃうぜ。
最後にウイングについての話。両サイドともに大きく開いた位置からプレーを始めるのだが、ドリブルを仕掛けていけないことが最初は気になっていた。特にソン。この感じだとペリシッチやソロモンの方が良いのでは・・・そう思ったところ出てきたペリシッチを見て、必ずしもそうじゃないと感じた。
15分で結果を出したい焦りもあったのかもしれないが、ペリシッチは積極的だった。ソンの時ににもっと勝負してくれよと思っていた場面でペリシッチは仕掛けてくれるし、勝率も悪くないのでスカッとした部分もある。ただペリシッチがボールを失ったことでカウンターを受ける数もまた増えてしまった。
ウイングがボールを持った時にマディソンは中央、ウドギは縦に抜けてペリシッチの後ろのケアをしている選手がいない状態でも五分五分のドリブルを仕掛けてしまうはリスクが高すぎる。これは単にペリシッチが悪いというわけじゃなくて、チームとして考えていくべきことだけど、失わない選択を続けたソンが良くなかったねと簡単に言われるような話でもないと思う。要はまだ、ウイングを軸とした崩しの部分は構築中だということだ。
良い部分も悪い部分の見えた試合だが、主体的にプレーして楽しい試合をしてくれているのはかなり嬉しいことだ。プレシーズンなんていうのは実際は練習に近いものなので、公式戦1発目でこれだけの変化と向かっている方向性を見せてくれればいう文句はない。あ、強いていうなら交代枠を使わなかった理由は知りたかった。沈黙していたクルゼフスキのところでプレシーズンでキレキレだったソロモンが見たかったし、マディソンもあと1ファールで退場しそうだったからロチェルソに替えてもよかったので。
上位チームに異常に強かったブレントフォードとのアウェーゲームでこの試合内容なら十分でしょう。次の試合はホームの初戦。相手はマンチェスター・ユナイテッド。カウンターに強みがあるのでピンチも多いだろうが、どこまでやれるか良い試金石になるでしょう。週末が楽しみだ。